ストレス/人間関係・人付き合いのストレス

大人になって発達障害かも…と気づいた時にすべきこと

【公認心理師が解説】状況に合わせた行動や人間関係の築き方がよく分からず、何かに夢中になると他のことができなくなる……それらが原因で日常生活での支障を感じ、「発達障害かもしれない」と不安になる方もいるようです。ここでは大人になってから診断されることのある発達障害の一つ、「自閉スペクトラム症」の概要を説明します。さらに、発達障害の可能性に気づいた時に参考にしていただきたい情報もお伝えします。

大美賀 直子

執筆者:大美賀 直子

公認心理師・産業カウンセラー /ストレス ガイド

求められている言動がわからない……心当たりをセルフチェック

悩む女性

空気を読むのが苦手。みんなは自然にできていることが、とても難しく感じる……これはもしかして発達障害によるもの?

大人になると、場の雰囲気を読んだり人の気持ちを推測したりしながら、その時々でふさわしい行動、求められる行動を選択していかなければならないことが増えていきます。しかし、それがとても難しく、人間関係や生活に難しさを感じている方もいます。

それでも大きな支障がなく、社会生活が送れているのなら、問題はないでしょう。しかし、常に戸惑いや困惑が増え、自信を失っている方もいるかもしれません。たとえば、次のような状況で、たびたび困ったことがないでしょうか?
 
  • 「相手の気持ちを想像してください」「周りに合わせましょう」「人の顔色を見て判断してください」と言われても、具体的にどうすればいいのかがわからない
  • 「マナーを守りましょう」「常識で考えてください」「場に応じた行動をしましょう」と言われても、具体的にどうすればいいのかがわからない
  • 意見を伝えると、「今ここで、それを言うのはおかしい」とよく注意される
  • 「今のは冗談だよ」と言われても、何が冗談にあたるのかが分からないことが多い
  • たとえ話を交えて説明されると、よけいに意味が分からなくなることが多い
  • 何かに夢中になるとあっという間に時間がたち、やるべきことが期日までに終わらないことがよくある
  • 話したいことを話すと、たびたび怪訝な顔をされたり、話を制止されたりする
  • 自分なりに考えて作業をすると、いつも失敗して注意される
  • 人混みの中や騒音の多い場所にいると、とても苦痛で仕方がなくなる
  • 「周囲に比べて作業や仕事が進んでいない」と言われることが多い
上記の多くに心当たりがあり、子どもの頃からたびたび困ったことがあり、今も困っている場合、必ずしも本人がうっかりしているため、努力不足のためではないのかもしれません。
 

自閉スペクトラム症とは……コミュニケーションが困難でこだわりが強い

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勉強が嫌いではなく、おとなしい性格であったために、発達特性に気づかずに成長してきた方も多い

たとえば、神経発達に特定の偏りを持つ発達障害の中に「自閉スペクトラム症」(自閉症スペクトラム障害)というものがあります。かつては「アスペルガー症候群」と呼ばれていたものも、ここに含まれます。

自閉スペクトラム症とは、社会的コミュニケーションと対人的相互反応が難しく、行動や興味の限定された反復的な様式を特徴としています。人との会話や非言語的なやりとり、人間関係の発展・維持などが苦手、特定の物事や行動、習慣に強いこだわりがある、感覚が過敏あるいは鈍感、などの顕著な特徴が幼少期からあり、学校生活や社会生活を送る上で困難が生じるものです。

自閉スペクトラム症では、知的能力障害を伴っていない方も少なくありません。そのため、割と勉強が得意で、割と静かに生活してきた方の中には、この発達特性に気づかずに成長している方もいます。こうした方の中には、大人になって初めて「もしかしたら発達障害なのかな?」と感じていく方もいます。

では、なぜ大人になって初めて、発達障害の可能性に気づくことがあるのでしょう?

たとえば、大学生活や社会人生活の中では、あいまいな指示や複雑なルールの中からとるべき行動を推測し、不明点に対して仮説を立てて実行してみたり、周囲にうまく確認したりしながら、物事を進めていかなければならないことが多くなります。また、状況に応じた臨機応変な対応をし、その都度、合理的な段取りを考えながら実行しなければならないことも、格段に増えていきます。

しかし、こうした状況の中でとるべき行動がわからず、学業や仕事が滞ることで、初めて発達障害の可能性に気づくことがあるのです。
 

まずは情報を集め、医療機関や相談窓口で相談を 

発達障害の可能性を感じ、生活上の困難を感じている場合には、直面している難しさが発達障害によるものなのかどうかを、知ることから始めるとよいと思います。すると、自分が苦手な行動だけでなく、得意な行動の根拠も知ることができます。そして、苦手な行動を補うための生活上の工夫、受けられるサポートの情報も知ることができます。

こうしたことを知るためには、自分の年齢に応じた発達障害の検査や診断を受けられる医療機関を受診するのが有効です。診断できるのは医師のみですので、医療機関で医師の診察と専門的な検査を受けることが重要です。医療機関は、地域の保健センターや保健所に問い合わせて教えてもらってもよいでしょうし、インターネットや口コミで情報を集めて、直接医療機関に問い合わせてもよいでしょう。

最近では、発達障害に関連した書物もたくさん発行されていますし、インターネットでも情報をたくさん閲覧できます。たとえば、国立障害者リハビリテーションセンターの「発達障害情報・支援センター」のサイトでは、発達障害を総合的に理解するための情報が公開されています。医療機関や地方自治体の保健関連のサイトでも、情報を発信しているところがあります。そうしたものを利用すると、自分に適した医療機関や相談機関の情報が見つかるかもしれません。

また、地域の障害福祉課などを訪ねると、公的な相談機関・支援機関の情報を入手することができます。NPO、市民グループ等によるさまざまな支援活動も増えています。相談できる場所は必ずありますので、発達障害の可能性を感じる方は、まずは情報を集めることから始めるとよろしいかと思います。
 
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