脱水症状予防に大切な「正しい水分補給」
水分補給を欠かさずに!
運動を続けていると必ず体温が上昇します。夢中になって運動を続けているうちに強い疲労感を感じたり、頭痛がしたりと体に異変を感じることも……。このとき、体は知らず知らずのうちに脱水症状を起こしていることがあります。予防としての正しい水分補給の仕方をご紹介します。
脱水症状の原因・症状の特徴
水分補給を行わないと血液は流れにくくなる
運動を行うと体温が上昇しますが、体は汗をかくことで上がった体温をもとの状態に戻すように調節します。汗をかくために血液は皮膚に送られますが、運動強度があがると皮膚だけではなく動きの激しい筋肉にも酸素が必要となり、血液が筋肉にも流れるようになります。皮膚から水分が蒸発し、さらに血液が必要になった状態で運動を続けると、汗をかくたびに血液中の水分が減ってしまい、血液の流れが悪くなってしまいます。粘性が高まった血液は流れを悪くするだけではなく、血液量そのものも減っているため、体にたまった熱を逃がすことや、筋肉を動かす機能が低下します。
体が水分不足になると筋肉のみならず、頭痛やめまい、吐き気など体調に変化が現れます。
- 筋肉が疲労して、けいれんを起こす
- のどの渇きから倦怠感(疲れたと感じること)を起こす
- 頭痛、めまい、吐き気、大量の発汗などが起こる
- さらにひどくなると意識を失う
水分不足の状態をそのままにしておくと、やがて脱水から熱中症へと症状が移行していきます。熱中症は炎天下の夏特有のものではなく、湿気の多い時期や曇りの日でも起こることがあるので注意が必要です。
適切な水分補給は熱中症予防にも効果的
のどが渇く前に、こまめに水分補給をしましょう
運動中に水をたくさん飲んでお腹が痛くなったことはありませんか? これは水の飲み方に原因があります。運動を始めてしばらくすると、体にたまった熱を下げるために水分が必要になりますが、のどの渇きを感じない程度であれば、ついつい後回しにしてしまいがち。のどが渇いたと感じたときには、体はかなりの脱水状態にあるため、一度に多量の水分を飲んでしまうことになります。一度にたくさん飲んでしまうと胃に水分がたまってお腹が重くなり、痛みを感じたり、体がだるく感じられたりすることがあります。
このようなことを予防するためにも30分を超えて運動を続ける場合には、運動を始める前と終わった後だけではなく、運動中にも水分を補給することが大切です。適切な水分補給の目安は次のとおりです。
■水を飲むタイミングと量
- 運動を始める30分前、250~500mlを何回かに分けて飲む
- 運動中は20分~30分ごとに一口~200ml程度を飲む
- 運動が終わった後は減った体重分を補うように何回かに分けて飲む
■飲み物の温度
- あまり冷やしすぎないこと。常温もしくは8~13℃程度に冷やしたもの
■飲み物の成分組成
糖度が5%を超えると水分の吸収率が低下するといわれています。市販のスポーツドリンクを飲む場合には糖分濃度を確認し、水で薄めて飲むとより体への吸収が早くなります。
水分補給だけでなく、塩分・糖分の補給も忘れずに
梅干は塩分とクエン酸を同時にとれる優れもの
体から発散される汗は塩分を含むので、運動を続けると水分と塩分が不足します。水分補給をするときは、あわせて塩分の補給も行いましょう。塩分を一緒にとると水分の吸収速度がより早くなり、脱水症状も改善されます。スポーツの現場では大きな水筒の横に、梅干や塩などをおいて塩分を補給できるようにするなどの準備をします。スポーツドリンクはもともと塩分を含んでいるので、水分補給と塩分補給を同時に行うことができます。また運動を長く続けているとエネルギー源が少なくなってくるため、糖分をとって運動時のエネルギー補給をするとより効果的です。
水分補給できているかをセルフチェックする方法
運動前後で体重をチェックしよう
運動中にどのくらい体の中の水分が失われたかは、運動前と運動後に自分の体重を量ることで簡単に確認することができます。運動前の体重と比較して、失われた水分量が体重の2%を超えないようにしましょう。たとえば運動前に体重が50kgの女性であれば、1kg以内の体重減少に抑えるようにします(運動後は49kg)。体重の2%以上の水分が失われると、体温が著しく上昇し、筋肉の温度が上がって熱っぽくなり、効率的に筋収縮することが難しくなります。また明らかに競技能力が低下することがさまざまな研究から報告されています。
この他にも尿の量と色を目で確認することでも正しく水分補給ができているかを確認することができます。いつもよりも尿の色が濃く量が少ない場合には、代謝産物が多く、もっと水分をとる必要があります。色が薄い黄色であれば、水分の代謝バランスがよい状態です。
水分補給のポイント・注意点
- のどが渇いたと感じる前に水分補給をする
- 飲み物の糖分濃度に注意し、必要に応じて水で薄めて飲む
- 飲みすぎは消化器官に負担をかけるので、適時適量を心がける
正しい水分補給で脱水症状や熱中症を予防し、よりよい身体のコンディションを保って楽しく運動しましょう。