療養食・食事療法/消化不良・便秘・下痢など消化器系の療養食

大腸憩室炎の食事療法のコツ・予防法…40歳以上に多い憩室炎

【管理栄養士・米国登録栄養士(RD)が解説】「憩室炎(けいしつえん)」は、腸のくぼみが炎症を起こした状態で、激痛や熱を伴います。くぼみは特に大腸にできることが多く「大腸憩室炎」とも言われます。大腸憩室炎になったときの食事療法や自宅療養中の食事のポイント、メニュー・食材の選び方、憩室炎の予防食について解説します。

一政 晶子

執筆者:一政 晶子

管理栄養士・米国登録栄養士(RD) / 栄養管理・療養食ガイド

大腸憩室炎とは、大腸にできた憩室(くぼみ)の炎症 

大腸憩室炎の食事療法のコツ・予防法…40歳以上に多い憩室炎

食物繊維はちゃんと摂れていますか?


憩室炎(けいしつえん)とは、消化器官にできたくぼみが炎症を起こし、激痛や熱などを伴う病気です。主に大腸で見られるため、「大腸憩室炎」とも言います。このくぼみは、圧力のかかる場所にできやすく、炎症がない場合は憩室症(けいしつしょう)と呼ばれています。憩室症自体は無症状です。憩室症は40歳以上の人で多くみられるようになります。

憩室症は、アメリカでは60歳以上で2人に1人以上、90歳ではほとんどの人にみられるようです。そして最近では、日本でも憩室炎になる人が増えてきています。食物繊維の摂取の減少など、食生活の変化も関連していると考えられています。多くの場合の憩室炎では、筆者は現在米国の臨床現場で仕事をしていますが、深刻な状況に発展して手術が必要なケースが増えている感覚があります。予防が大切だと以前より強く感じるようになりました。
 

大腸憩室炎の予防法…食物繊維の多い食事・運動・水分・排泄

憩室炎の予防法としては、以下のようなものが挙げられます。

■食物繊維をしっかり摂る
たっぷりの食物繊維の摂取は、くぼみ形成の予防に役立つといわれています。食物繊維には水溶性と不溶性のものがありますが、どちらのタイプでも役立ちます。食物繊維についての詳しい情報は、「食物繊維のすごい健康効果」を参考にしてください。

■運動をする
その因果関係がはっきりしていない部分もあるようですが、憩室炎の予防に有効だといわれています。運動をすることで、腸の動きを活発にしたり、腸内の圧力を減らす働きがあります。

■水分をしっかり摂る
食物繊維は水を吸収することで便の量を増やし、軟らかくする働きがあります。食物繊維をせっかく沢山とっても、水分が不足していると逆に便秘になることもあるので注意して下さいね。

■トイレのタイミングを逃さない
トイレのタイミングを逃してしまうと、便の軟らかさが失われてしまうこともあり、排便時に余計な圧力がかかる原因となります。
 

大腸憩室炎の食事療法・自宅療養中の食事のコツ……炎症が起きたときは「低食物繊維」

■負担の少ない食事を
炎症が起こった場合や憩室炎の手術後には、腸を休ませる食事や低食物繊維の食事療法がすすめられています。

炎症を起こしている時は、腸に優しい食事をするように言われるかもしれません。最初の数日は、スポーツドリンク・すまし汁・コンソメ・果実のない果汁・シャーベット・ゼリー・水・お茶・クリームなしのコーヒーなどを勧められるかもしれません。

体調が良くなってくると、腸に負担が少ないものを加えるようにアドバイスされるでしょう。憩室炎で負担が少ない食事とは、食物繊維が少なく、脂質が多すぎない食事です。うどん・白米・麺類・パスタ・白パン・牛乳・ヨーグルト・チーズ・豆腐・豆乳・魚・鶏肉・卵・よく加熱した野菜・缶詰の果物などがあげられます。

炎症を起こしている場所や個人の状態などによっても食事療法が変わってくることが考えられるので、担当の医師や栄養士のアドバイスを受けるようにしましょう。

■症状が落ち着いたら少しずつ食物繊維を取り入れ、次の憩室炎予防につとめる
食物繊維をたっぷり摂取するようにしましょう。果物・野菜・精製されていない穀類・豆類などには豊富な食物繊維が含まれます。食物繊維は便の移動をスピードアップさせる働きがあり、これにより腸内の圧力を減少させることができます。

急に食物繊維の量を増やすと、お腹が張ったり、ガスがでやすくなるので、少しずつ増やすようにしましょう。どうしても食事から十分な食物繊維が摂取できない場合は、食物繊維のサプリメントの摂取を医師と相談するのもよいでしょう。医師の方からサプリメントの摂取が指示される場合もあります。

■消化しにくいものについて
種など消化されない、または消化しにくいものは、くぼみにはまって炎症の原因となることがあるので避けたほうがよいと言われる一方、一時は炎症の原因になる可能性を疑問視する見解が増えていました。しかし、現在ではこれらの食べ物は食物繊維が豊富なので、むしろ摂取した方が良いという解釈になっています。心配な方は医師に相談するとよいでしょう。一般的に避けたほうが良いと言われてきたのは、以下の食品です。 
  • ベリー類(いちご、クランベリー、ブラックベリーなど)
  • とうもろこし(ポップコーンを含む)
  • ナッツ類(ピーナツ、カシューナッツなど)
  • トマト
  • すいかの種(意識して食べる人は少ないはずですが…)
  • ごま
  • ポピーシード
クラッカーやおせんべいなどを食べると、「ゴツゴツした食べ物のかけらが腸を痛めるのではないか……」と考える人もいるようです。くぼみが食道などにある場合は別ですが、大腸にある場合は、そこに到着するまでに食物は消化吸収を終えているはずです。

一度できてしまったくぼみは、そのままの状態になってしまいますが、上記の方法を実践することで、更なるくぼみの形成を予防したり、くぼみの状態の悪化を避けるのに役立ちます。
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