目の病気/網膜剥離

網膜剥離の治療、手術法、手術費用

網膜剥離の場合は、レーザーや手術で治療します。それぞれの方法と手術の費用の目安などを詳しくご説明します。

この記事の担当ガイド

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

網膜剥離の代表的な治療法

網膜剥離の治療には、レーザーと手術があります。網膜の状態を判断して治療方法を選びます

網膜剥離の治療には、レーザーと手術があります。網膜の状態を判断して治療方法を選びます

網膜剥離裂孔、すなわち限局性の網膜剥離の場合は、レーザーで治療することになります。簡単に説明すると、網膜剥離の周辺のまだはがれていない部分にレーザーを照射することで、スポット溶接の要領で熱で強くくっつけ、網膜剥離がそれ以上進行しないようにするのがこの方法です。

この治療法を提示した場合、大体患者さんと以下のような会話が行われます。

「え、それじゃあ先生、はがれた部分は一生はがれたままなんですか?」
「そのとおりです」
「じゃあ、はがれた網膜は死んじゃうんですか?」
「周りが機能しているので死んでいないように見えますが、機能的には一生まったく使えない状態になっちゃいますね」
「そんなん嫌です……」
「だったら入院して、手術で全部くっつけますか? 大手術で痛みもあるでしょうし、近視や乱視が進行したり、網膜の上に変な膜ができて物がゆがんでみえる後遺症が残ったりすることもありますが……」
「それはもっと嫌です……。では、レーザーでお願いしたいのですが、でも先生、レーザーを打ったら絶対にそれ以上網膜剥離が拡がらないのですか?」
「これぐらいの範囲なら経験的には大丈夫と思いますが、絶対ということはないです」
「もしレーザーの範囲を超えて剥離が拡がったら、どうするのですか?」
「その時は、レーザーでは止めきれないことがはっきりしたわけですから、手術しないとしょうがないですね」
「先生、レーザーで大丈夫か最初から手術が必要かはどうやって決めているのですか?」
「これは経験と勘です。はがれた網膜が眼の動きでひらひらと揺れているような場合は、その揺れる力で網膜が強くはがされるのでレーザーではだめですね。そうでない場合は、はがれている範囲、はがれている長さなどを見て勘で判断しています」
「先生、レーザーを打ったら新たに網膜裂孔ができちゃうことがあると聞いたのですが……」
「自分は今まで多数の患者さんを治療していますが、幸いそんな経験はないですよ。網膜裂孔ができたということは硝子体による網膜の牽引が広い範囲で起こっているというわけで、当然同時期に他の部分に網膜裂孔ができる可能性があります。また、網膜円孔の場合も円孔ができるぐらい網膜が弱くなっているというわけなので、他の部分に同時期に円孔ができることもあるでしょう。同時期に偶然できた他の穴を先生や患者さんがレーザーでできてしまったと錯覚しているケースも多いのではないかと思いますよ。」
「ということは、メリットがデメリットを上回るというわけですね。」
「そうですね」
「じゃあ、レーザー治療でお願いします」

大体上記のような会話が交わされます。レーザーも一応手術法の1つですが、上で書いているレーザーでは止めきれない、いわゆる本当の「網膜剥離」の場合は「網膜復位術」と呼ばれる手術で治療します。

みなさんは2枚の薄い板をくっつけたい場合はどうしますか? まず糊をつけて、2枚の板を接触させるでしょう。よりしっかりつけたい場合は、そのあとしばらく上に重りでも乗せておくでしょう。

この原理をそのまま応用しているのが、網膜復位術だと私は考えています。眼科の教科書にはこのような例えはあまり載っていませんが、元来機械工学系の私としてはこれで間違いないと思っています。網膜復位術には方法が大きく違う2つの方法があります。以下でわかりやすく説明しましょう。

強膜バックリングによる網膜復位術

はがれた部分を、眼球の外側からつける方法。「グライオ」という先がマイナス90度になる鉛筆のような道具を網膜の外側にある強膜に外側から強く押し付け、穴の周りを冷やします。これで人工的な凍傷を起こします。みなさんも氷が手にくっついた経験されたことがあるでしょう。体は冷やすと癒着を起こすので、この働きに糊の役目をさせます。

次に、網膜と網膜色素上皮層を物理的に接触させないといけないので、強膜に外側から「バックル」という厚みのあるバンドを強く縫い付け、穴の下の強膜をへこませます。これで網膜色素上皮層側から網膜と網膜色素上皮層を接触させるわけです。このバックルには、穴の近辺に残っているかもしれない硝子体牽引をやわらげる効果もあります。この時網膜下の水があまりに多いと接触しないので、強膜に外側から小さな穴をあけて水を抜くこともあります。

通常は接触させるだけで網膜は自然にくっつきますが、水を抜いても接触しない場合や、接触しているが大きくはがれているのでしばらく押し付けておきたい場合もあります。さらに、水を抜くときの出血などの合併症を避けるために水を抜かず、バックルを縫い付けても接触しないケースもあります。そのようなケースでは、はがれた部分同士を強制的に接触させる必要があるので、眼球の中に空気や特殊な気体(SF6やC3F8と呼ばれます)を入れ、その浮力で網膜を押し付けて接触させ、自然に気体が抜けるまで押し付けることで、はがれた部分をくっつけます。

特殊な気体の方が眼内で長持ちするので、長期間押し付け効果を得たい場合はそちらを選択します。そんなに長く押し付けなくても十分と判断した場合は、空気(我々の言葉でroom air)を選択します。

上記のような方法で網膜を再度接着させるというわけです。手術ではあくまで穴の部分の治療を行うので、穴のまわりの網膜をくっつけて穴さえふさいで水がしみこんでこないようにすれば、網膜の下の水は手術中に抜かなくても、仮に抜いたときに残っていても、自然に吸収されるというわけです。

強膜バックリングによる網膜復位術のメリットは、眼球内に器具が入らないこと。水を抜く時に細い針を入れますが、これでもほとんど器具は入らないと考えてよいでしょう。そのため、手術による感染や眼球内部の大きなトラブルが起こりこづらいです。デメリットは、強膜をくぼませるため、眼球が変形して近視が出たり乱視が出たりするケースが考えられることです。

硝子体手術による網膜復位術

はがれた部分を、眼球の中からつける方法。近年硝子体手術の技術の進歩によって、この方法を採用する症例、医療機関が増えています。

まず硝子体内に特殊な棒(硝子体カッター)を挿入し、硝子体を除去。これにより、硝子体による牽引をすべて除去します。次に、眼球内に空気を満たし、網膜のはがれている部分を風船のように膨らませて、網膜色素上皮層に接触させます。次に穴の周りにレーザーを打ち、この熱で糊付け効果を得ます。

さらに、眼球内の空気を特殊な気体(SF6やC3F8)に置き換えます。長期間押し付ける必要がない場合は、空気だけで終了することもあります。術後は気体が浮力で穴を押し付けてくれる方向に顔をかたむけ、押し付け効果で網膜をくっつけます。

硝子体手術による網膜復位術のメリットは、以下の4つ。

  1. 強膜バックリングでは治療できないような深い部分の穴でも手術可能である
  2. 強膜バックリングでつきにくい下方の網膜剥離にも採用できる(下方は逆立ちするわけにもいかないので気体を当てづらい。硝子体を除去すれば大量の気体を入れられるため、うつぶせになっているだけで下方でもそこそこおしつけ効果が得られます)
  3. 理論的には眼球の変形がないので、術後の近視化や乱視がおこりづらい
  4. 硝子体を除去するので飛蚊症の原因である硝子体内の混濁などもきれいになり、術後の見え方が非常に良くなる

これに対して、デメリットは以下の3つ。
  1. 水晶体に負担がかかるため、術後に白内障が進むことが多い。そのため、ある程度の年齢の方は白内障手術を同時にやってしまうことも多い
  2. 強膜バックリングに比べると感染症リスクが高い(あくまでも強膜バックリングと比較しての場合。感染症リスクが高い手術というわけでもないので、あまり心配しすぎなくてよい)
  3. 硝子体をなくすため、硝子体による押し付け効果がなくなるせいか、合併症で網膜が再度はがれてしわしわになってしまう「増殖性硝子体網膜症」になるリスクが強膜バックリングに比べて高い
など。

どちらの方法が適しているかは、はがれ方によっても違い、主治医の得意不得意や考え方によっても変わるところです。近年は手術技術が非常に進歩していて、手術の上手な先生が全国にいます。そういう先生方はそれぞれの考えややり方で業績をあげているわけなので、まずは先生に診てもらい、上記のどちらの方法がよいかを全てお任せして決めてもらうのがよいと思います。

また、もともと網膜はつるつるしていてとてもはがれやすいものなので、一度はがれた網膜は手術でつけるのが非常に難しく、一度では完全に治らないことも多々あります。2~3度手術しても完治しないこともあります。その場合も先生に不信感を持たず、先生やスタッフさんと一緒に頑張って治療をしていただければと思います。

網膜剥離治療にかかる費用

治療にかかる費用は、網膜裂孔、円孔のみの場合だと、3割負担で33600円プラス検査料(2010年1月1日現在)。しかし、非常に大事なことなので繰り返しになりますが、網膜に穴が形成された瞬間はもちろん穴しかないわけですが、診察を受けるときは当然そこから少しは時間が経っているわけで、ほとんどのすべての場合で穴の周辺に網膜剥離が起こって網膜剥離裂孔になっています。よって、網膜剥離裂孔に対する治療費を見ておく必要があります。こちらは3割負担で54300円プラス検査料なので、大体6万円ぐらいです。加入されている生命保険で手術給付金が出る場合があるので、保険会社に問い合わせてみることをお薦めします。手術番号はK276です。

レーザー手術では止めきれない、本格的な手術が必要な網膜剥離の場合は「網膜復位術」と呼ばれる手術で治療します。手術費用自体は3割負担で 64200円。しかし使用する薬剤は膨大で、入院する場合がほとんどなので入院費用もかかります。この場合は最低でも20万~30万円は見ておいたほうがよいでしょう。

更新日:2010年03月16日

あわせて読みたい

    この記事を読んで良かったですか?

    良かった

    183

    この記事を共有する