運動と健康/スポーツ栄養・アスリートの食事

速筋が遅筋に乳酸を送っています! 乳酸はエネルギー源!

乳酸については以前に取り上げて、血中乳酸=疲労物質と書きました。新しい考えでは、乳酸=エネルギー源とすべきです。ですから乳酸飲料を飲む事は疲労物質を飲む事にはなりません。

西園寺 克

執筆者:西園寺 克

医師 / 感染症・健康情報ガイド

乳酸については以前に取り上げた事があります。当時、血中乳酸=疲労物質と書きましたが、新しい考えでは、乳酸=エネルギー源とすべきです。ですから乳酸飲料を飲む事は疲労物質を飲む事にはなりません。今回、最近の乳酸事情を取り上げました。

乳酸は疲労物質?

乳酸乳酸は、筋肉疲労の話では、ブドウ糖→ピルビン酸→乳酸という図式があります。「筋肉から乳酸が血中に出て、肝臓でブドウ糖を作る時(糖新生)の材料になる。運動強度を強めて行くと血中乳酸濃度が高くなり、高濃度になると筋肉が動かなくなる。そのために疲労物質乳酸の除去は疲労の回復につながる」という記述を多くみかけます。はたしてこれは真実なのでしょうか?もし真実ならば、乳酸飲料を飲む事は疲労物質を飲む事になってしまいますね。

乳酸は心臓と遅筋のエネルギー源の元!

ピルビン酸乳酸自体が直接エネルギー源となることはありません。ピルビン酸→乳酸とは反対の乳酸→ピルビン酸の反応が起きて、ピルビン酸がミトコンドリアで使われば、乳酸はエネルギー源の元となります。調べてみると無酸素運動で早く動く速筋はピルビン酸→乳酸の方向で反応が進みます。一方、心筋と主として有酸素運動で動く遅筋では乳酸→ピルビン酸の方向で反応が進むことが判明しています。新しい図式では速筋→血中乳酸→心筋・遅筋・肝臓という事になります。実はグリコーゲンをたくさん貯えている速筋が血液中に乳酸の形で心筋・遅筋にエネルギー源を送っているのです。それでも使われなかった乳酸を肝臓が回収するというしかけです

筋肉痛と乳酸は関係あるの?

筋肉痛は誰もが経験した事があるものです。運動では筋肉が伸びながら力をだすような場合、筋肉痛が起こりやすい事が判っています。例えば階段を登る時より下りる時により筋肉痛を感じるのは経験があると思います。さて判っていそうで実は判らないのが筋肉痛の原因です。乳酸が筋肉に溜まって神経を刺激するのが筋肉痛の原因という説明があります。現在の考えでは、乳酸は体の中で消費されてしまって筋肉中に残りません。特に運動してから数日後に起こる筋肉痛に乳酸が関係する可能性はほとんどありません。

普段あまり使っていない筋肉を急に使うと筋肉が損傷して浮腫を起こします。筋肉のこりには、この浮腫が関係しています。運動後に、この浮腫の修復が必要となります。その修復過程で炎症物質が産生されると考えられています。なお炎症物質は筋肉ではなくて筋肉を覆う筋膜や皮下の結合組織で痛覚を起こします。

乳酸飲料を安心して飲もう!

動物実験では乳酸を飲んだ場合でも飲まない場合でも筋肉疲労には差はありません。乳酸はエネルギー源と考えて安心して飲みましょう。


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