コンサルタントで働く/コンサルタントの仕事

コンサルタントの仕事

外からは知り難いコンサルタントの仕事内容。戦略テーマと、業務改革テーマそれぞれのプロジェクトを例に、具体的な仕事の内容をご紹介します。

執筆者:大石 哲之

コンサルタントの仕事とは?

コンサルタントが取り扱う仕事は多種多様

コンサルタントの仕事は多種多様

コンサルタントの仕事は非常に多岐にわたります。プロジェクトテーマも毎回異なり、毎回が新しいチャレンジです。例えば、ガイドの私が関わったプロジェクトの一例を挙げると、

・大学法人のマーケティング
・大手ISP(インターネットサービスプロバイダ)の顧客CRM(顧客管理)戦略
・大手メーカーのインターネット新事業のビジネスプランニング
・通信教育事業における業務プロセスとシステムグランドデザイン
・旅行業における新予約業務のロールアウト支援
・製薬業の営業改革

と、非常に多岐にわたっています。私の場合、得意分野が新規事業や事業プランニングなのでその分野が多いのですが、業務プロセスの構築やシステムの基本構想も行うこともあります。

コンサルタントは、自分の得意のテーマを持ちつつも、いろいろなプロジェクトに関わる(こなす)ことが求められます。専門分野を中心にしながら、幅広い分野に対応する柔軟性と応用力があることが求められます。

代表的なプロジェクトとして、戦略テーマと業務改革テーマの2つについて解説します。

戦略テーマでのプロジェクト内容と進め方

今回取り上げる戦略テーマのプロジェクトは、大手ISPの顧客CRM戦略が典型的なプロジェクト。 クライアントは大手ISPで、顧客がアクセスするサイトが3つに分かれています。各サイトを別の部署が担当し、発信している内容も顧客ができることも、それぞれ独自に進められ、内容がバラバラでいわゆる縦割りでした。 この組織を改め、会社として顧客接点を統一してサービスを行うためにCRMを見直すというプロジェクトでした。

このようなプロジェクトでは
  1. 問題設定
  2. 仮説設定
  3. 分析
  4. 戦略の策定
  5. アクションプラン
というステップで進めることが一般的。

「問題設定」では、そもそも何が問題なのかを議論します。クライアントの問題意識を明確にして、プロジェクトとして取り組むべき範囲を明確にします。たとえば、前提として、「3つのサイトを1つに統一せず、3つそれぞれの役割をはっきりさせる」「商品プロモーションなどには踏み込まないことを今回の取り組み範囲とする」といった大まかなプロジェクトの対象範囲を決めます。「対象外」の範囲を決めることで、いたずらにプロジェクトのテーマの拡大することがないようにするのです。

「仮説設定」では、この問題に対してどう取り組むべきかのフレームワークを考え、問題点の仮説を構築します。顧客の基本ニーズは、「新規契約ための情報」「サポート情報」「コンテンツを楽しむ」に分類されるだろうと、仮説設定しました。そのいくつかの基本ニーズと、現在のサイトが提供する情報の間に、いくつかのギャップがあるのではという具体的な仮説をたてました。

「分析」では、ユーザー調査やログ分析などを行い調査します。「サービスを申し込もうとする人が情報を調べる」がニーズの大半を占めているだろうという仮説ですが、実はそれが大間違い。「サービス購入後のお客さんが、自分の購入したサービス内容の詳細を確認するため」訪問している割合が予想を遥かに超えて多かったことが判明したのです。

「戦略の策定」では、分析結果をふまえて、戦略を策定します。ここでは、顧客がサイトに訪れるニーズを再度整理して、それぞれのニーズ別に提供すべき情報は何か? どのチャネルを使い、どのくらいの頻度で提供すべきか? といった基本部分を整理しました。そして、各チャネルやサイトの役割やミッションなどを再整理しました。

「アクションプラン」では、基本戦略の実行に向けて、さらに詳細な論点を議論し、スケジュールを立て、具体的なサイトイメージを練るといった、具体化の作業を行います。

このプロジェクトでは、クライアントとチームを組んで実施。クライアント側3名、コンサルタントが2名の合計5名のチームで約3ヶ月のプロジェクトでした。

業務改革テーマでのプロジェクトの内容と進め方

テーマ分野が変わると仕事の進め方も変わります

テーマ分野が変わると仕事の進め方も変わります

業務改革テーマのコンサルティングは、現在の非効率な業務を革新し、新しい業務の方法を導入するとともに、そのためのシステムも同時に導入するというのが基本的なパターンになります。

業務上のテーマとしては、
  • 現状の業務とシステムでは正確な原価が計算できず、戦略的な意思決定が困難になってきている。
  • 会計の業務とシステムが、今後の国際会計に対応できていない。
  • コールセンターが全国に散逸し、業務のやりかたも仕事のやりかたも不統一で、顧客クレームが絶えず、コストも掛かりすぎている。
といったものがあげられます。

プロジェクトの進め方は、
  1. 現状調査
  2. 新業務プロセス、業務要件の定義
  3. システム開発、導入
  4. 定着化
という流れになります。

「現状調査」では、非効率とされる業務の現状を調査します。現場に仕事の方法をヒアリングしたり、利用している情報システムを使ってみたり(もしくはその設計書を読んだり)ということで、現状何が行われているのかを把握します。その過程で、どこの改善点(ボトルネック)があるかを見極め、どのような改善を行うべきかの仮説を設定します。

「新業務プロセスの策定」では、理想の業務の姿をデザインします。クライアントと議論をしながら、問題となる点を1つ1つ整理して議論し、実現可能で効率のよい業務を作り上げていきます。

この際、ERPパッケージ(統合業務システム)の導入を前提とする場合では「Fit&Gap分析」を行います。ERPパッケージで用意されている機能が、実現しようと思う業務に適合しているかどうか「適合性(Fit)」と「ズレ(Gap)」を分析するものです。適合していない場合、新しく機能を開発するのか、それとも業務を変えて対応するのかといった判断が必要で、このあたりの議論を整理していくのもコンサルタントの重要な役割です。

業務の概要がかたまったら、システム化を意識して具体的な業務の要件を詳細に詰めていき、最終的に「業務要件定義書」としてとりまとめます。

「システム開発、導入」では、実際にシステム開発をします。システム開発の上流工程にあたる、システムの基本設計やシステム要件定義といった部分もコンサルタントが行う場合があります。コンサルタントはシステムが完成するまで関わることが多く、実際の開発部分は外部のSIerに依頼するのが普通です。単価の高いコンサルタントが単純なプログラミングをしていては、クライアントからみても不満です。コンサルタントは全体の進行管理や問題が起きたときの原因究明・課題の切り分け・優先順位づけなどの、プロジェクト全体に関わる仕事を担います。

商品ありきではなく、クライアントありき

戦略テーマと業務改革テーマの2つを例に挙げました、プロジェクト内容は「クライアントの解決したい問題」が先にありきです。コンサルタント側の商品やコンセプトを押し付けるのではなく、あくまでクライアントが解決したい問題にそった形で、それを解決するための知恵を出すのがコンサルタントの仕事です。
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※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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