マンション購入術/マンション購入の失敗・トラブル

価格差2000万円超 年収格差が居住者を派閥化させる

低層階と上階では分譲価格に多額の開きが発生するタワーマンション。こうした価格差がマンション管理に悪影響を与えることがあります。

平賀 功一

執筆者:平賀 功一

賢いマンション暮らしガイド

■2000万円を超える分譲価格差

読者の皆さまは現在、何階にお住まいですか?マンションの分譲価格は上階へ行くほど高く低層階ほど割安なのはご存知だと思いますが、昨今の話題となっているタワーマンションは40階を超える物件も珍しくなくなり、階数によって販売価格に大きな開きがあります。私、ガイドの平賀も現役営業マン時代にマンションの値付けを経験しましたが、階数や部屋向き・角部屋中住戸などの諸条件を勘案して価格差をつけていく作業はとても大変でした。何しろ値付けの良し悪しが販売状況に大きく影響するだけに、責任重大なのです。

物件の規模や立地、さらに分譲業者の販売戦略などによって金額の差はありますが、まったく同じタイプの部屋で階数が1階だけ異なることによる価格差(以下「階数価格差」)はおおよそ30万~70万円程度です。単純に階数価格差を50万円とした場合、1階の部屋と40階の部屋では販売価格に2000万円(50万円×40階)もの開きが生じることになるのです。


■上階、低層階、最後に中層階の順で売れてゆく

専有面積も間取りもまったく同じマンションが、階数の違い(もちろん眺望や日当たりは変化する)だけで2000万円もの差があれば、誰もが「安い住戸(=低層住戸)から売れてゆく」と想像しがちですが、実は高層マンションではこうした常識は通用していません。

そもそもタワーマンションの魅力とはその街の「ランドマーク」としての存在感であり、一種の「ブランド」となっているため、ラグジュアリー(高級感)を求める高額所得者は価格の高い住戸(高層住戸)から契約していきます。逆に「予算はないけれど憧れのタワーマンションに住みたい」と、若い夫婦や単身者は価格の安い低層住戸を購入していくのです。

そして最後に、やっと中層階が埋まっていきます。高層マンションにおける中層階は消費者からみると最も魅力がなく、販売側からすると一番売りにくい階層となります。夜景や眺望に優れているわけでもなく、価格も割安感は薄れ、やや乱暴な表現をすれば商品特性と価格設定のバランスが中途半端なのです。同じ20階にある住戸でも、「40階建ての20階」と「20階建ての最上階(20階)」とでは一般的に資産価値は後者の住戸に軍配が上がるのも、こうした理由があってのことなのです。


■エレベーターで何階を押すかで“勝敗”が決まる

このように、高層マンションでは階数によって分譲価格に大きな価格差があることで、当然購入する方の所得水準にも格差が発生し、マンション管理に予期せぬ弊害をもたらすことがあります。

同じマンションの居住者がエレベーターに乗り合わせると、相手が何階のボタンを押すかが気になり、自分(の住んでいる住戸)より上の階だと「負けた」、下の階だと「勝った」と心でつぶやく(?)のです。冗談半分の笑い話かと思うと、決してそうでもないようです(汗)。

不透明な経済状況を反映して「勝ち組」「負け組」などといった表現で企業を色分けする風潮は現在も続いていますが、根底にある心理は同じようです。


■収入格差が居住者を派閥化させる

常々申し上げているようにマンションはその特性上、一種の集団生活に等しいため、相性の合わない人とも付き合っていかなければなりません。年収格差による生活水準の違いはマンション管理を円滑に進める障害となりやすいですが、日頃からの「コミュニケーション」によって風通しを良くしておくことで問題解決が可能です。

横並びで画一的な教育を受け、また会社も組織による縦社会を経験してきた日本人にとって「隣の芝はとても青く」見えます。しかし「抵抗勢力」は政治の世界だけにとどめ、同時に無党派層(=マンション管理の無関心者)を一掃することで、良好な住環境を手に入れましょう。


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※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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