パン屋さん取材レポート

更新日:2007年02月09日

ムッシュイワン【立川】

昨年OPENしたムッシュイワンには、明治時代にも遡る長時間発酵の製法、日本の食事パンのルーツがありました。ホテルパンの父と呼ばれた故・福田元吉氏の技術を継承する職人、小倉孝樹さんにお話を伺いました。

ホテルベーカリー創始者イワン・サゴヤンと福田元吉

「ホテルパンの父」 福田元吉さん
昨年立川にオープンした「若葉ケヤキモール」のベーカリーカフェ、ムッシュイワンに立ち寄った日、わたしは何の情報も持っていなかったのです。でも、店内に故・福田元吉さんの写真が飾られているのを見て、はっとしたのでした。

福田元吉さんは「ホテルパンの父」といわれ、帝国ホテルに日本初のベーカリー部をつくったイワン・サゴヤン氏の愛弟子として食事パンの確立に貢献した人です。

イワン・サゴヤン氏はロマノフ王朝の宮廷職人の末裔で、そのパンに魅了された当時の帝国ホテル会長、大倉喜八郎氏の依頼により来日したのです。

それがこの店とどう関係するかといえば、ムッシュイワンという店名はイワン・サゴヤン氏のイワン。店でパンを焼いているのは、福田元吉さんのもとで修業した小倉孝樹さんなのでした。

ホテルパンのスピリット

「気負いはないけれど、なんとか親爺(福田元吉氏)がやってきたことを守っていきたいと思っています。そこで修業した者でなければ受け継ぐことのできない無形の文化財を継承していきたい。伝統芸能といってもいいかもしれませんね」という小倉さん。

ホテルのベーカリーは料理とともに食べるパンを確立した場所ですが、そもそも「ホテルパン」とは、どんなパンでしょうか。

ムッシュイワン 小倉孝樹さん
「今ではあたりまえのようにどこでもやっている長時間発酵のパンがあるでしょう。あの原点です。流行ではなくてね。きちんと発酵で育て、香りを引き出したパン」。 福田元吉さんはその香りを大切にされていたのだそうです。

「サゴヤンのパンは単に美味しいだけでなく、料理と一緒に味わうことによって、料理とパン双方の味がより一層際立つかのような風味であった」とは、帝国ホテル料理長であった村上信夫氏が著書『村上信夫メニュー』の中で書かれていたこと。

小倉さんは、パンを発酵で育てることについて、ストイックなまでに温度や湿度、吸水した生地の見きわめにこだわり、生地に触り、確認し、待ち、つくりあげていくことについて、話してくれました。本物の職人のからだはまるで、パンをつくる精密機械のよう!それこそが修業によって受け継がれる伝統の技なのかもしれません。

次のページではベーカリーカフェムッシュイワンについてご紹介します。
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写真

清水 美穂子

ブレッドジャーナリスト、フードコーディネーターなど、新聞、雑誌、書籍にて活動中。

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