マラソンコース42.195kmの測り方
東京マラソンコースを計測しているスタッフの方々。広い道路だとワイヤーだけではさらに計測は困難を増す。トランシットなどの測量機器なども使用する |
日本陸上競技競技連盟は、組織の運営、競技にかかわる多くのルールや手順を2冊の本にまとめて出版しています。陸上競技に関わるものにとっては、憲法であり法律です。町の小さな大会でも、陸上競技協会が主催や主管する大会ならば、開会式で「本大会は平成○○年日本陸上競技連盟競技規則に則り」と宣言します。法律と違うのは、ゴルフと同じで、ローカルルールがあればローカルルールが優先されることでしょうか。
さて、このルールに従うと、マラソンコースはどのように計測されているのでしょうか? マラソンについては、他の道路を使用する長距離走や競歩のコース計測に含まれ、「長距離競走路ならびに競歩路公認に関する細則」という規則に規定されています。
これによると「コースは道路の端から30cm中に入った部分を測る」ということになっています。S字に屈曲している部分は、屈曲部の内側から30cm中に入った部分の頂点を結ぶ最短ライン、ということになります。道ばたに側溝などのある場合は側溝の縁から30cm入ったポイントです。したがってコーナーなどは30cmより内側を走ればそれだけ実走行距離は短くなるし、外側を走れば長くなります。しかし、これはランナーが勝手にコースを選んでいるだけで、コースとしての長さが変わるわけではありません。
計測方法は、「陸上競技審判ハンドブック」に説明されています。それによると、ワイヤーロープを用いるか自転車にカウンター計を取り付けて計測する、ことになっています。現在の日本ではワイヤーロープが主流のよう。直径5mm、50mの鋼鉄製のワイヤーをメジャーとし、尺取り虫のごとく測ります。42.195kmとなると844回、1回5分でも70時間かかるという恐ろしい作業です。この作業に必要な人手は、ワイヤーロープの場合、約30人と車両3台が必要だとのことで大変な作業なのです。しかも、スタッフは頭数さえ揃えればいいというものではありません。計測は検定員、区域技術役員が行います。車が頻繁に通る道路を斜めに横断ということがいくらでもあるので、事前に道路使用許可証を取得しておくことは当然、作業者全員傷害保険に加入することが明記されています。
最後の仕上げに陸連に公認してもらわなければなりません。検定をパスして合格すると公認料を払います。フルマラソンコースの場合、新設時に210,000円(税込み)、2年ごとの継続時に105,000円(税込み)が必要です。お金もかかるのです。
昔、日本では竹で測定していたといいます。かつて竹はもっとも一般的な物差しの素材でした。細く削れば屈曲するから使いやすかったかもしれません。50mの竹はなかったでしょうけど…。そして、各国勝手な方法で計測をしていたのを、国際陸連が統一した計測方法を示したのは1986年のことでした。そんなに昔ではありません。今後はGPSなど、デジタル計測機器用いた計測が一般的になると思われます。