ジョギング・マラソン/ジョギング・マラソン関連情報

夏場はトレイルランで逞しさを身につける!

何回もサブスリー一歩手前で失敗してしまう原因は…。ちょっと過保護すぎるのでは? たくましさを起伏走やトレイルランで身につけ、マラソンという距離にも時間にも慣れてしまえばサブスリーは目の前に。

谷中 博史

執筆者:谷中 博史

ジョギング・マラソンガイド

まず、速さよりたくましさを身に付ける

トレイルラン
森の中のハイキングコースを走ってみる。常に気を抜けない、しかし自然に優しく包まれて長時間走り続けられるだろう
なかなかサブスリーを達成できないランナーの弱点のひとつに、私は”ひ弱さ”が挙げられると思います。スピードはあるのだけれど、何か練習時と異なる状況になるとがくっとペースが乱れるとか、離されだしたり、いったんスピードが落ちると立て直すことができない(しない)というような点です。

練習時と異なる状況というのは、さまざまなケースが考えられます。コースのアップダウン、路面の変化、天候、周囲のメンバーなどの相違です。クロスカントリーレースでは、ケニア、エチオピアのアフリカ勢が大活躍ですが、彼らが強いのは高地で生活してきたということだけではなく、よく報道されるように、整備されていない起伏のある道を10km以上も通学していたという、環境が育んだたくましさにあるのではないかという気がするのです。いつも整備された舗装路やトラックでトレーニングをしていると、足裏の感覚が鈍感になります。膝や腰など体のサスペンションが発達しません。いつも走っている路面のコンディションとちょっと違うだけで調子が狂ってしまいます。

ローマ五輪で、アベべ・ビキラ選手が石だたみの道を裸足で走り、金メダルに輝きました。ものに動じない、哲人のような風貌が強く印象に残りましたが、まさしく、石だたみごときで動じる人生を送ってはこなかったのだと思います。

起伏走やトレイルランニングでたくましさを

ガイドはよく山を走ります。山岳地帯とまではいかない里山程度の林道を走っていてもさまざまなことがあります。路面はでこぼこですし、蛇やトカゲが出てくるなんてしょっちゅうです。カモシカやサルが出たこともあります。森のフィトンチッドを浴しながら走ることは気持ちのいいものですが、野生味溢れるこうした行動は、現代人の体の奥に隠されている動物的生命力を蘇らせ、たくましさを身につけてくれるようです。

誰に頼るわけにもいかない、一方であらゆる状況に適合すること、利用すること、予知すること。それだけが自然の中で生きぬく方法です。結局スポーツも同じことなのです。

エリートランナーのレベルでは、マラソンでも、10,000mでのスピード養成が不可欠と言われています。それはそれとして、私はサブスリーの達成ぐらいでしたら、スピード養成のトレーニングは必ずしも必要ではないという意見です。スピードトレーニングが、サブスリーの達成を早める方法ではあると思っています。しかし、強い体(筋肉、靭帯、骨、内臓、消化力、分泌系、環境適応力、精神力など体のあらゆる面において)を用意しておかないと、故障を起こしがちです。起伏走は、スタミナを養成しながら、スピードトレーニングに必須の基礎体力やバランスの良い体作りにももってこいなのです。

トレイルラン その他の効果

■飽きずに長時間練習できる
走路の状態が悪いので、気が抜けず、3時間程度の時間はまたたくまに過ぎてしまいます。一人では単調な練習も、トレイルランならば飽きずにこなせます。

■足裏の感触が敏感になる
常に足裏の感触を気にしなければならず、足裏の感触に敏感になります。このことが、一般のロードやトラックを走るときの無造作な着地から、足裏の感触を意識する着地に変えてくれます。路面の変化にも迅速に対応できるようになります。

■登り下り、スピード変化に強くなる
アップダウンがまったくないというマラソンコースは滅多になくて、平地のコースでさえ川や鉄道を越える橋がつきものです。東京国際(女子)マラソンでは、四ッ谷の坂がポイントです。平坦コースといわれるつくばマラソンでも30kmからのゆったりした坂に辟易するランナーは多いでしょう。元気なときには何も感じずに通過してしまうような坂が、疲労しているときには、その疲れを倍化させ、坂を登りきった後の走りにまで影響を与えます。登り坂だけでなく、長野マラソンのように下り坂のこなし方がポイントになるレースもあります。

走り方も、使う筋肉も坂の傾斜やその長さによって異なります。スピードの変化(走りの切り替え、心拍数の上げ下げなど)にも慣れます。さまざまなシーンに対する適応力をつけてくれるのが、起伏走なのです。

■バランスが取れた体作り
腕振り、腿上げ,蹴りなど筋肉を多彩に使うので,バランスがとれた体作りがはかれます。

■リハビリトレーニングに最適
膝に故障を抱えている人にとって、坂道を登る練習は、心肺機能と筋肉に大きな負荷をかけても関節には負担が少なく、リハビリ期のトレーニングとして最適です。ただし、故障時は、下りはゆっくりと関節に影響しないように走ってください。クッションのよいシューズを使いましょう。

■土台作りができる
登り坂の練習は、腰から脚部の各筋肉と心肺機能を鍛えます。車で言えば,シャーシー、サスペンション、エンジン、排気システムの強化と考えてよいでしょう。サブスリーを目指すには、ある低度のスピード養成が必要だと思いますが、このような走るための土台を強化せずにスピードトレーニングを積むとどうなるのか。故障を起こす確率が高くなります。

筋トレの目的は、パフォーマンスをアップすることと故障の予防という二つの目的があるわけですが、市民ランナーにとってあまり楽しい練習ではありません。起伏走は、筋トレの要素も含んでいますから、筋トレ嫌いの方にもおすすめのトレーニングなのです。

■下りでスピード練習も
膝を中心とした脚の筋肉ができたら、ゆっくり下っていた下りをスピード練習に活用します。登りではどうしてもピッチが落ちます。しかし、マラソンではピッチも大事です。下りは否応なくピッチも上がりますし、脚も広がります。これを利用して下りをスピード練習に使うのです。ただし、下りのスピードアップ練習は、練習スケジュールからいえば、9月半ばを過ぎてからでしょう。

起伏走やトレイルラン、週に1度は実施を

起伏走は、ぜひ週に1度は実行してみてください。

とはいうものの、そのようなコースがどうしても遠方になってしまうという方もいるでしょう。そんな方は、歩道橋や渡線橋をたくさん渡るコースを設定してみてください。トレーニングジムに行かれる方は、トレッドミルを傾斜をつけて使います。私の経験では、トレッドミルを使って全力疾走したりインターバル練習をしている人は見かけますが、傾斜をつけて走っている方はついぞ見かけたことがありません。しかし、これは効きます。ぜひ試してください。
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