移り変わりの激しい介護求人市場
コムスン事件をきっかけに、介護関係の求職者数は減り続けた |
その後、ある程度職員数が充足し、求人が沈静化すると、求人広告等に見られるようになったのは、「ヘルパー2級以上求む」「介護福祉士有資格者歓迎」などの資格要件。求職者に一定以上の資格・レベルを求める求人が増えたのです。
しかしそれもつかの間。景気が上向きになり、一般求人での求人数が増えるに従って求職者の介護業界への関心は薄れていきます。またコムスン事件により、介護業界のイメージは大きくダウン。事件をきっかけにマスコミにおいて介護業界の低待遇、離職率の高さが報道されたこともあって、求職者は減りつづけました。
ちなみに、2008(平成20)年度の「介護労働実態調査」※1によれば、離職率はホームヘルパーが13.9%、介護職員※2が21.9%。2008(平成20)年上期の全産業平均の離職率8.2%※3を大きく上回っています。離職者のうち、1年未満で離職している人が39.0%、1年以上3年未満で離職している人が36.5%。なんと離職者全体の75.5%が3年未満で離職しているという実態も明らかになりました。
一方、こうした状況の中、有料老人ホームの開設が相次ぐなど求人数は増え、介護業界は人手不足が常態化。施設を開設したものの職員が足りず、ベッドをフル稼働できないケースが数多く見られるようになりました。
とにかく人手を確保したい。事業者の多くがそう考えるようになり、2007年後半頃から求人広告には再び「未経験者歓迎」等の文字が数多く見られるようになりました。
そして2009年。アメリカの金融大手の経営破綻から端を発した不況により、日本でも多くの企業の経営が悪化。求人は一気に冷え込み、自動車関連企業の派遣労働者の雇い止めなどによって失業者が町にあふれました。一般求人は、1件の求人に100人以上が応募することもまれではない、超買い手市場となったのです。
あまりの求職環境の厳しさから、求職分野を一般求人から介護関係の求人へと広げる人が続出。一般求人と比べると、未だ求人数が求職者数を上回る売り手市場ではありますが、それでも介護業界にとっては近年にない求職者数の増加が見られます。職業訓練校でも、ホームヘルパー2級など介護系資格取得の講座の受講希望者が急増。希望者全員が受講できない事態となっています。
※1 介護労働安定センターが実施し、2009(平成21)年7月に発表。
※2 施設職員など、介護保険事業所で直接介護にあたるホームヘルパー以外の職種
※3 厚生労働省が2008(平成20)年12月に発表した2008(平成20)年上期雇用動向調査結果の概況より