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「道路族」とは 自民党「族」の基礎知識(2ページ目)

首相でさえもお伺いをたてないと政策が実行できない? 大きな力を持つといわれる自民党の「族」についての基礎知識をまとめてみました。なりたちの歴史から有力「族」の現状まで。

執筆者:辻 雅之

【有力な「族」、力と現状】

★「道路族」

建設族のなかでも、とくに道路建設に関心や利害関係を持つ「族」です。「族」のパイオニアにして完成者、田中角栄元首相がまとめあげたもので、自民党政調会の道路調査会がこの「族」の根拠地です。

現在は「抵抗勢力」の大物、古賀誠前幹事長が会長をつとめるほか、野中広務元幹事長ら田中派の系譜を引く橋本派の大物メンバーたちが名を連ねています。

道路族は「道路特定財源」という大きなパイの分け前にあずかることのできる非常に「おいしい」「族」といえます。田中→橋本派がこの「族」をつくりあげ、支配してきた理由もここにあるのだろうと思います。そのことがまた、道路4公団民営化や道路建設凍結問題での紛糾、「抵抗勢力」のはげしい抵抗につながっているわけです。

★「税制族」

政調会税制調査会(「自民税調」)のメンバーを中心として税制にかなりの大きな影響力を持つ「族」です。最高顧問の山中貞則氏は「消費税の生みの親」として有名で、今も税制に関しては、首相が口出しできないくらいの大きな影響力を持っているといわれています。

税制に関与する「うまみ」は、優遇税制の配分権を握ることにあります。とくに配分するパイの小さい最近の財政事情から、その「うまみ」はますます大きくなっているといえます。

しかし少数の有力議員たちの「密室政治」によって日本の税制政策がすすめられている現状への批判も強まっています。今後は小泉首相が税制論議の主導権をどこまで自民税調から「奪取できるか」が注目されるところです。

★「郵政族」

文字とおり郵政事業民営化に反対し、郵便局を応援する「族」です。自民党総務部会が根拠地。「高祖議員派選挙違反事件」以降その勢力が低下しつつありますが、田中角栄以降橋本派の牙城でもあり、集票マシーンの中核として現在も大きな力を保っています。

とうぜん郵政民営化をかかげる小泉首相にとっては天敵的存在。郵政事業の「民間参入」は条件付きながら勝ち取った首相ですが、今後の郵政族の抵抗しだいによっては、自民党情勢がぬきさしならない展開に持ち込まれることになるかもしれません。

★「農林族」

農業・林業関係に強い「族」です。もともと農村地帯に強い自民党。そんな自民党を支える「族」として、やはり大きな力を持っています。自民党農林水産部会が根拠地。

今年はじめ、ネギやしいたけなどの緊急輸入制限(暫定セーフガード)がすみやかに実施されたのも、この「族」が大きな力を発揮したからこそ。派閥横断的に「族」が形成されているため、今後も派閥事情に左右されず一定の力を保っていくでしょう。

★「商工族」

産業関係に力をもつ「族」です。やはり田中→橋本派の力が大きいといわれています。しかしドン的存在だった梶山静六氏が死去して以来、その存在感が薄まっているといわれています。自民党経済産業部会が根拠地。

そのため「うまみ」の1つだったはずの石油公団もあっさり廃止へ動いてしまう情勢。今後は小泉首相の「政府系金融機関(中小企業や各種産業などへの融資をおこなってきた金融機関)廃止・民営化」をいかに阻止していくかが力の見せ所になることでしょう。

★「厚生族」

旧厚生省管轄の社会保障、社会福祉政策などに力を持つ「族」で、かなりの影響力を持つといわれています。橋本派以外の派閥の議員も有力で、橋本元首相や小泉首相もボス的存在の政治家です。自民党厚生労働部会、自民党政調会医療基本問題調査会などが根拠地。

小泉首相が医療保険改革に優先的に手をつけているのは、かれが厚生大臣を2度つとめた厚生族としてのカンがはたらく分野で、改革の手がつけやすいということがあるのでしょう。それでも医療改革論議が紛糾したのは、なにかと「うまみ」の多いこの「族」の主導権をめぐる首相サイド=森派と橋本派、堀内派などとの争いが背景にあったように見えます。

最後のページでは、「族」政治の今後について解説していきます。
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