コレクティブ・インパクトで社会課題(食ロス)を解決する!

まだ食べられる食品を捨ててしまう「食品ロス」は、経済的な損失、地球環境への負荷などのさまざまな悪影響があり、その削減は全世界共通の課題とされています。そこで環境省では、家庭系食品ロス・事業系食品ロスともに「2030年度までに2000年度比で半減する」ことを目指し、食品ロス削減に取り組む人々を中心に、活動の輪を広げていくことを計画。消費者・自治体・事業者が共創する「STOP!食ロス」プロジェクトとして、「食品ロス半減」の実現を図るため、消費者一人ひとりの意識と行動の変容を促す仕掛けづくりを行っていきます。

提供:STOP!食ロス

日本の食品ロスは、世界の食料援助量より多い!年間612万トン*1

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2015年9月の国連サミットで、2030年までの国際開発目標「持続可能な開発のための2030アジェンダ(2030アジェンダ)」が採択されました。2030アジェンダでは、相互に密接に関連した17の目標と169のターゲットからなる「持続可能な開発目標(SDGs)」を掲げていますが、その17の目標のうちの12番目に位置づけられているのが「持続可能な消費と生産のパターンを確保する」=「つくる責任 つかう責任」です。

「持続可能な消費と生産のパターンを確保する」=「つくる責任 つかう責任」に関しては、より具体的な11のターゲットが定められ、そのなかのひとつに「2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食品廃棄物を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食品の損失を減少させる」というターゲットがあります。これをふまえて、日本では、「第四次循環型社会形成推進基本計画」で「2030年度までに家庭からの食品ロスを半減する」との目標を定めています。

*1 平成29年度推計(環境省)

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(資料提供:井出留美氏)

「食品ロスという言葉は知っているけれど、なんとなくしかわからない……」という人もいるかもしれません。あらためて説明すると、食品ロスとは、まだ食べることができるのに廃棄される食品のこと。国連食糧農業機関(FAO)の定義によると、生産・貯蔵・加工・食品製造・流通の過程で発生する「Food Loss」と、小売・外食・家庭から発生する「Food Waste」の大きく2つに分けられます。

それでは、日本の食品ロスの現状はどうなっているのでしょうか?農林水産省・環境省の平成29年度推計によると、日本の食品ロスは1年間の概算で612万トン*1。これは、世界の食料援助量420万トン*2をはるかに上回る数字です。612万トン*1のうち、家庭で捨てられているものが284万トンで46%、事業者に捨てられているものが328万トンで54%をそれぞれ占めています。

また、事業者に捨てられている食べ物は、メーカーから発生したものが産業廃棄物、コンビニ・スーパー、飲食店、ホテルなどの小売店から発生したものが事業系一般廃棄物として扱われ、事業系一般廃棄物は、多くの場合、家庭ごみとともに焼却処分されます。家庭ごみを含む一般廃棄物の半分近くが食品ごみともいわれており、食品ロスを処分するために。多くの資源・エネルギーが費やされているのです。さらに、一般廃棄物の処理事業経費が約2兆円*3に上ることを考えれば、経済的損失も小さくありません。

*2 国連世界食糧計画2019年実績
*3 一般廃棄物の排出及び処理状況等 平成30年度(環境省)

「STOP!食ロス」プロジェクトの目標とは

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2020年10月、菅内閣総理大臣が、2050年カーボン・ニュートラル、脱炭素社会の実現を目指すことを宣言しました。カーボン・ニュートラルとは、温室効果ガス排出量を削減する努力を行うとともに、削減が困難な部分の排出量については、ほかの場所で排出削減・吸収量等を購入したり、それを実現するプロジェクトや活動を実施したりして、その排出量のすべてを埋め合わせた状態のことです。

食品ロスを削減することは、食品の生産、流通、加工に使われる資源・エネルギーの無駄を省くという意味から、脱炭素社会・循環経済への移行につながると考えられるため、カーボン・ニュートラルの実現を目指すうえでも、重要な位置を占めることになります。

2030アジェンダ、さらに2050年カーボン・ニュートラルの実現においても重要な役割を果たす、食品ロスの削減を進めるには、国民一人ひとりのライフスタイルの変化が求められます。そのためには、国、地方、事業者やNPO、消費者など、立場の異なる人々が垣根を越え、それぞれの強みを生かしながら、課題解決に取り組んでいかなければなりません。「STOP!食ロス」プロジェクトでは、さまざまな個人や団体がお互いに強みやノウハウを持ち寄り、社会課題の解決に取り組む試み「コレクティブ・インパクト」を促し、食品ロス削減に関する活動を共創するプラットフォームづくりを目指します。

プラットフォームが果たす重要な役割と、それをサポートする「actcoin」

食品ロス削減に取り組んでいる個人、団体は、けっして少なくありません。ただ、家庭系食品ロス、事業系食品ロスともに「2030年度までに2000年度比で半減する」という目標を達成するには、さらに多くの人々、社会全体で食品ロス削減に主体的に取り組む必要があります。

そこで重要な役割を果たすのが、食品ロス削減に関する活動を共創するプラットフォームです。食品ロス削減に取り組む個人、団体の活動についての情報を発信、ストックすることで、啓蒙や価値観の共有、協働を促進し、社会的インパクトを創出する場となることが期待されます。

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そうしたプラットフォームの一つとして、さまざまな活動の後押ししてくれそうなのが、「actcoin(アクトコイン)」です。actcoinは、社会のための小さなアクションを「見える化」し、そして「新しい価値」に変える、日本初のサービス。社会課題やその解決を目指す取り組みについて学んだり、発信したり、ボランティアや寄付で応援したりするアクションに対して、コインが付与されます。actcoinを運営するソーシャルアクションカンパニーの薄井大地さんは、actcoinにおける食品ロス削減の取り組みと、今後の展望について、次のように語ってくれました。

「actcoinのコアバリューは『ソーシャルアクションの可視化と価値化』です。食品ロス削減に関連するものとしては、たとえばドギーバッグを使ったり、食べきれないものを注文しなかったりするなどのデイリーアクションによって、actcoinを獲得することができます。そうして、さまざまな場面で一人ひとりが起こすアクションをモチベートする役割をactcoinが担いたいと考えているんです。今後は、そのアクションに対してパートナー団体からリターンが得られる設計の実現を目指します」

>>「actcoin」について詳しく

ユニークかつ実効性の高いプラットフォームとして、今後、さらなる発展が望まれるactcoin。「STOP!食ロス」プロジェクトで創出を目指しているプラットフォーム同様、食品ロス削減のためのコレクティブ・インパクトの促進、活性化におおいに力を発揮してくれるに違いありません。

食品ロスを削減するためには、どんな方法がある?

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(資料提供:井出留美氏)

ごみの発生、資源の消費をもとから減らす「リデュース(Reduce)」、くり返し使う「リユース(Reuse)」、資源として再び利用する「リサイクル(Recycle)」を総称して、「3R」といいます。「3R」は、ごみを限りなく減らして、ごみの焼却や埋め立て処理による環境への負担をできるだけ少なくし、循環型社会を実現するための、重要なキーワードです。

「3R」はいずれも重要な行動ですが、リデュース>リユース>リサイクルというふうに、優先順位がつけられています。なかでも資源の消費をもとから減らす「リデュース」こそが、最も重要な行動とされているのです。食品ロスの削減は主に「リデュース」に該当し、こうした観点からも、可及的速やかに実現に向けて行動に移すことが求められているのです。

それでは、実際に食品ロスを削減するには、どのような方法が考えられるのでしょうか?「STOP!食ロス」プロジェクトの発足に伴い開催されたオンラインイベント「STOP!食ロス共創会議」では、「食品ロスを解決するソーシャル・インパクトについて」というテーマの下、4名*4のアドバイザリーボードによる意見交換が行われ、私たち消費者にできる食品ロス削減の方法として「食べきり・持ち帰り」、「フード・シェアリング」、「賞味期限*5の見直し・啓発」などの事例が挙げられました。

たとえば、飲食店などで食べきれなかった食べ物を持ち帰れる「ドギーバッグ」を使えば、おうちでもお店の味を楽しめるだけでなく、お店側の廃棄コスト削減にも貢献できます。あるいは、「賞味期限*5」を過ぎた食材をおいしく食べきるために工夫して調理することも、家庭でできる食品ロスを減らすアクションのひとつです。

大切な食べ物をロスにしない、自分にも地球にもやさしいアクションを、これからの生活に取り入れてみてはいかがでしょうか。

>>環境省「食ロスポータルサイト」

*4
石川 淳哉 氏( ソーシャル・グッド・プロデューサー)
浅利美鈴 氏 (京都大学大学院地球環境学堂 准教授)
井出留美 氏(食品ロス問題ジャーナリスト)
吉高まり 氏(三菱 UFJリサーチ &コンサルティング株式会社 プリンシパル・サステナビリティ・ストラテジスト)

*5
賞味期限…品質が保持されおいしく食べることができる期限。
消費期限…腐敗などが起こらず品質が劣化しないとされる期限。

【ダイジェスト】「STOP!食ロス」プロジェクト共創会議(オンラインイベント)