メディアは人が作っている
メディアの裏側を知り、情報発信者の意図を知れば、振り回されることはありません |
今回の事件でも明らかになったように、そもそもメディアは常に正しいことを伝えているわけではありません。つまりメディアは間違えるし嘘もつく。メディアは中立公正で客観的だと思っている人もいるかもしれませんが、それは大間違いです。なぜかというと、それはメディアという媒体を作っているのは、テレビ局や出版社に勤務する「人」だからです。
彼らにとっては、発行部数を増やしたり視聴率を上げたりすることが至上命題です。したがって、読者受けを狙った切り口で情報を発信します。また、編集する側も人ですから、好き嫌いを含めて特定の意図があり、それに基づき伝えるニュアンスを調整・誘導していることがほとんどです。
例えば1991年に起こった湾岸戦争。当初はイラクがクウェートに侵攻して始まった戦争でしたが、事態は変わりました。当時頻繁にテレビで放映されていた、真っ黒い油にまみれた水鳥の映像を見た人は多いと思います。こうした映像によって、「イラクをこらしめなければならない」という世界の世論が高まり、アメリカを中心とする多国籍軍によるイラク空爆が始まったのです。
しかし戦争後、あの水鳥は、実は全く関係ないタンカー事故のときに撮られた映像であることがわかりました。まさに世界中がだまされた映像です。
メディアを作っているのが「人」である以上、彼らが中立公正で客観的な視点を持っているなどという保証はどこにもありません。
メディアの報道を冷静に受け止め、自分の頭で考えよう
メディアが世論を作り、メディアが私たちの世界観を作っています。だからこそ影響力が大きい。だからこそメディアは簡単に企業を消滅させることもできるし、人を自殺に追いやることもできる。でも、必ずしもメディアだけが悪いわけではありません。なぜなら、そのメディアを誘導しているのは他ならぬ私たちなのです。だって視聴率や販売部数という数字を作っているのは私やあなたなのですから。メディアはその数字を追いかけて動いているに過ぎないのです。(もっとも、その視聴率調査自体も怪しいものですが)
繰り返しになりますが、メディアは間違えます。事実であったとしても報道の仕方によって、善が悪に、悪が善になってしまうこともあります。コップは横から見れば四角ですが、真上から見れば丸に見えるように、物事は全て多面的なのです。
もちろんメディアは私たちにとって重要な情報源であることに変わりはありません。ですから、メディアで知ったことを冷静に考える余裕を持ち、メディアが言っていることの意味合いを洞察し、自分の頭で判断できるようになる必要があります。
賢いあなたなら、今回の事件を契機に、メディアが伝える内容はある事象の一つの側面を映し出しているのに過ぎないのだと認識できるはずです。そのように考えれば、投資だけではなく、生活の様々な場面でメディアの報道を複眼的に考察し、使いこなすことができるでしょう。