効率を無視してみる
昨今はやたらと効率化を追求する風潮がありますが、新社会人のみなさんは、いったんそんなものは無視するくらいの方がいいと思います。お金も無駄遣いして初めて使い方を覚えるように、仕事も回り道をして初めてわかることも多いものです。僕は学生時代、ティッシュ配りのバイトをやったことがあります。慣れないウチは誰もティシュをとってくれず、暗い気分になりますが、何百人もこなしているうちに、少しずつ受け取ってもらえるようになります。そして、どんな歩き方や表情の人が受け取ってくれるか、事前にわかるようになります。そういう人に目を合わせて差し出すと、とってくれる。自分の予想が当たるとうれしい。
また、直前に差し出しても受け取りにくい。わざわざ手を伸ばして受け取るのも恥ずかしいですから、受け取る人の気持ちになれば、どういう位置に差し出すと抵抗感無く受け取りやすいか、どのタイミングで差し出せば気づいて受け取ってくれるかがわかってくるようになります。そして、受け取ってもらえる率がさらに高くなる。単なるティシュ配りが、俄然おもしろくなる。
先日、運転免許の更新にいったとき、受付で係の人が古い免許証をコピーしていましたが、その方法が秀逸でした。決められた位置にコピーできるように、あらかじめコピー機の台に、免許証の大きさに穴を開けた白い下敷きを置いていたのです。これで大量の免許証も素早く用紙の定位置にコピーできるわけです。コピー取りにしたって、量をこなせば見えてくるものがあるということです。光が消えればフタを開けてもコピーはとれる、ということに気がつくように。
「1日100枚名刺を集めてこい」という指示も、「こんなの意味ねーよ」と斜に構えるのではなく、まずは愚直にやってみる。そうすると、どういう挨拶をすれば話を聞いてもらえるのか、どういうトークをすると名刺をもらえるのかなどが見えてくる。
無駄打ちを繰り返す中で得たノウハウは、何より貴重です。この経験がない人は、結局薄っぺらいのです。なぜ経営者やプロスポーツ選手の言葉に重みがあるか。地道な苦労や修羅場をくぐり抜けて来た経験があるからです。
効率化を無視してどうするんだ?という意見もあると思いますが、効率化よりも「気配り」を追求するのです。作業者がより良い作業者になるのが効率化です。本当の効率化とは、顧客や相手が喜ぶことにつながるものです。ですからまずは気配りを追求する。それは重宝がられる人材になる秘訣ですし、結果として効率的になるものです。ですから合い言葉は、「どうやったらあの人は、あるいはあの会社は喜んでくれるのか?」です。
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