王妃の寝室を思わせるベッドルーム
王妃の寝室を思わせる気品と絢爛さ。 |
退廃の美を彷彿させる装飾美学
4階へ通じる階段の奥には、天井から下着などの洗濯物が吊り下げられ雑多な生活の匂いが漂い始めます。この階にも寝室が二つありますが、ここでは、19世紀に入りシルクトレードが不況になり、生活が退廃した落日の館を想定して装飾されています。最初の部屋は、召使の部屋を思わせるような、狭くて粗雑で質素な造りになっています。小さなベッドは散らかり、テーブルの上には食い散らした食べかけの食事が残っています。
もう一つの部屋は、隣の部屋とはがらりとイメージを変え、生活の匂いのしないお化けでも出てきそうな感覚。部屋には、豪華なベルベットのカーテンを掛けた天蓋つきのベッドがあり、立派な造りの寝室だったようなのですが、暗く、埃っぽく、壁は剥がれ、天井にはひびが入り、クモの巣が所々に張っていて、人の気配は感じられません。そして、この館の中で唯一時が止まっているような空間です。この寝室は、チャールズ・ディキンズの小説に見立てた設定で装飾され、ディキンズの小説にちなんだ参考物件や書物などが置かれています。ガイドがこの部屋の中に入ってふっと思ったのは、ディキンズの小説『グレート・イクスペクテーションズ』に登場するキャラクター、ミス・ハヴァシャム(大きな館に孫娘と暮らす風変わりな富豪の老婆)の事です。たぶん彼女の館にもこんな部屋があったのではないでしょうか。そのように考えると、隣の粗雑な部屋は、もっぱら小説の主人公・ピップが少年時代に兄夫婦と暮らした家の中のようですね。
いかがでしたか。アメリカからやってきた1人のアーティストが、自分の生活の場所をキャンバスに見立て、ファンタジーと装飾美学の絵筆を走らせた一大絵巻。デニス・セヴァーズ・ハウスは、彼自身のファンタジーが造りだした 『リヴィング・アート』です。そこでは、今もなお200年前の世界が存在し、変わることなく永遠に同じ時を刻み続けています。
観光感覚の美術館や博物館に見飽きた人、過去への不思議な時間旅行を体験してみませんか。観光ガイドからも忘れられた、ガイドお勧めの秘密の場所です。
見学の詳細
現在はクリスマスデコレーションが飾られている。 |
(4つのフロアにある10部屋を約30~45分間かけて見学。)
毎月曜夜(時間帯は確認)サイレントナイト £12(人数制限あり要予約)
(値段は少し高めですが、ロウソクの灯りだけの沈黙の夜は雰囲気満点でお勧め。)
第一第三日曜(14~17時)£8(予約なし)
第一第三日曜の翌日月曜(12~14時)£5(予約なし)
*現在はクリスマス特別展示のため、ほとんど毎日オープン。
サイレントナイトのみ、特別価格£15(要予約、日程と時間帯は要確認)
■Dennis Severs’ House
住所:18 Folgate Street Spitalfields, London E1 6BX
最寄駅:地下鉄Liverpool Street 駅から徒歩5分
電話番号: 020 7247 4013