「日本のようにホームレスだからといって殺したり蹴ったりとか搾取したりとかっていうのはないですよ。ニューヨークには冷たい人もいるけど、その裏表であったかい人も多い。僕がホームレスを辞めたのは、物乞いを始めたことがきっかけだったんです。楽に金が稼げるってホームレスの友人から聞いて、ストリートでカップを置いて人からお金をもらうことにしたんだけど、人からもらったお金は、ドラッグを買うのに使えなかった。お金をくれた人の誠意を無にするような気がしたんです。お金をくれる常連さんや色んな人に会って話をしてるうち我に返った『このままホームレスやってたら、この人達に対して裏切ることになるんじゃないかな?』って。
今は『ドラッグは必要ない』って思ってます。僕は自分がそれなりに生きていける、裸になって生きていくことを許してくれるニューヨークが、ニューヨークの人が好きなんです。日本で僕みたいな生き方をしていたら、社会がまず許してくれないでしょうから。」
在ニューヨーク16年のうち6年続いたホームレス生活に終止符をうった境さんは、現在イタショー・メディアという企業で働いている。ただ、いまだにストリートのゴミを見ると使えるものがないか目がいってしまうとか。そしてストリートでは顔なじみのホームレスのお爺さんに「ハーイ!」と軽く声をかけていた。「ニューヨークへ来ることに気負う必要はない。」というのが境さんからのアドバイス。ただしドラッグにはまっちゃうとホームレス生活だって待っているニューヨーク、全ては自分次第って場所なのだ。
境さん自身が、彼のNYでの半生をつづった『ニューヨーク底辺物語』(扶桑社)が10月1日に発売されました。彼が見て感じたアメリカという国と人間。あの宮本亜門さんを”感動”させたこの一冊!