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ドラッグ中毒患者によるゴスペル

ハーレムにある麻薬中毒患者リハビリテーション・センターは、常時400~500人の患者が住み込みで治療中、ここ数年来ゴスペルによってリハビリの効果を期待するというカリキュラムがある。

執筆者:溝口 弘恵


ハーレムにあるARC<麻薬中毒患者リハビリテーション・センター>は1957年に設立され、常時400~500人の患者が住み込みで治療を受けているが、ここでは数年来ゴスペルを歌うことによってリハビリの効果を期待するという特徴あるカリキュラムがある。

そのARCのゴスペルメンバーが演奏するという教会へ、ハーレムに1987年から在住の日本人トミー富田さんに連れていっていただいた。トミーさんはARCのゴスペルを指導しているジャズ・ミュージシャンでベーシストのカーティス・ランディーさんとも長いおつき合いなのだそうだ。

教会ではゴスペルが始まる前に、一人ずつ私服の人がマイクを握って話していた。「私はドラッグにはまってましたが、神によって救われました。」小さな声でボソボソと話す黒人女性。「スピーク・アーップ!(もっと大きな声で)」席にいる人が叫んだ。

「神のおかげで立ち直ることができました。神に捧げます。」と歌いだす人もいる。これらはドラッグに溺れていた人たちの宣誓だ。2,3人の宣誓が終わると、ARCというマークのついたオレンジの衣装をまとった男女が壇上に上がった。

若い男の子や女の子から中高年まで様々な人々。甲高い声は教会の高い天井まで響き渡る。よどみのない美しいコーラスがそれについて流れる。彼等は私の想像とは違う優しい表情の男女ばかり、ふくよかな身体を左右に動かし、大きく口を開けて大声で歌った。

力強いハーモニーは別のエネルギーから発せられているように、いつも近所の教会で聴くゴスペルとは違う気がした。アカペラのせいもあるかもしれないが、特に人間らしさが感じられるのだ。

それはドラッグ中毒から立ち直ろうと、救われようとする魂の叫びのように全力を出し切って歌う姿を目前にしているせいか。

「ここでゴスペルを教えるランディーも元はドラッグ中毒だったんだ。売れっ子のジャズマンだったのが、ドラッグにはまってからはダメになっちまった。だけどARCに来て、このゴスペルのおかげで立ち直ってジャズの世界に復帰したんだよ。ここの牧師さんも皆、スタッフはドラッグから立ち直った人たちばかりなんだ。」とトミーさんが語った。

残念ながらARCでの様々なリハビリ後も再び、ここへ戻ってくる者もいるらしいが、ゴスペルによって心から救われれ、完全なる社会復帰を果たす人が一人でも多く出てくるよう活動を続けている。

ハーレムのゴスペルについて
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
※海外を訪れる際には最新情報の入手に努め、「外務省 海外安全ホームページ」を確認するなど、安全確保に十分注意を払ってください。

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