3/3 ゆっくりと時を過ごす。乃木坂アートさんぽ [東京の観光・旅行] All About

外苑東通りに突如あらわれる立派な煉瓦塀。実は乃木邸の厩（うまや・馬小屋）である。煉瓦は英国から取りよせたもの

乃木夫妻の過ごした場所

さて、最後に訪れるのは、乃木神社です。乃木神社に祭られているのは、日露戦争で活躍した乃木希典（のぎまれすけ）将軍と静子夫妻。夫妻は明治45年（1912）、明治天皇が崩御せられた年の９月13日に、天皇の後を追って殉死されました。

この話は、当時、日本中に衝撃を与え、以来その功績や人柄と共に、長く語り継がれています。乃木神社は結婚式でも有名ですが、こうした夫妻の強い絆にあやかるように、との願いがこめられているわけですね。

重厚な邸宅への入口。邸宅は質素な木造だ

神社の隣は、緑深い公園として開放されており、その中に、かつて夫妻がすごした明治時代の邸宅も遺されています。フランス陸軍の兵舎のスケッチを元に設計されたもので、傾斜した土地に建っているため、実は３階建てです。

内部は命日である９月12日と13日のみしか公開されませんが、邸宅の回りには廊下がめぐっており、窓越しに部屋の様子をうかがうことができます。中には、夫妻が命を絶った部屋も見えます。

乃木邸の周囲には廊下がわたされている

よく手入れされた庭には、ゆったりとした時間が流れていきます。庭はそのまま、神社の本殿域に続いていますので、お詣りしていきましょう。運がよければ、結婚式を挙げる幸せなカップルに出会えるかもしれません。

すぐそこが外苑東通りやミッドタウンとは嘘のよう。喧噪と隔絶された空間とは、まさにこのことです。そうそう、春はサクラも見事ですよ（公園は港区が管理しています）。また、乃木神社では第２日曜日に骨董市も開かれます。

あっちこっちとご紹介してきましたが、このように東京ミッドタウンの麓、乃木坂には、この街と長い時間を共にしてきた、素晴らしい空間があります。人気スポットを訪れた日に、ぜひ、ちょっと寄り道して、多くの人に愛されてきたこの街の魅力に触れてみてください。


公園側のアーチから、乃木邸の厩をのぞき見る	公園のモニュメント「ひねり、うつり、ながれ」越しにミッドタウンを望む