チャーガンジュー!〈みんな元気〉 |
■オバァは魔法のバッグを持っている
■オバァは値切りの天才である
オバァは魔法のバッグを持っている
沖縄のオバァが魔法のバッグを持っている確率は大変高い。
バッグにはありとあらゆる食品が格納されており、公園のベンチで、あるいはバスの中で、いつでもどこでもわけ隔てなく見知らぬ人に、菓子などが進呈されるのだ。
「あ、運転中だからね。あとでね~」
バスの運転手にとっては、ちょっとだけ、有難迷惑だったりする。
魔法のカバンの中身は「飴玉」だったり「黒糖」だったり「酸っぱいマン」だったりと実にいろいろで、なかにはアメリカ菓子だったりバナナだったり、それこそ何が出てくるか分からない。
「ねーさん、これを食べなさい」
見知らぬオバァがくれたのは、ティッシュペーパーに包んだ、歯型のついた食べかけのサーターアンダギー〈砂糖天ぷら〉であった。
余談だが、オバァのなかには自室の箪笥がドラえもんのどこでもドア化している人も見受けられる。そこには、驚くほど大量の菓子類が隠匿してあったりするのだ。当然賞味期限なぞ知ったことじゃない。
オバァは値切りの天才である
ある店のウィンドウに飾られていた銘入りの花瓶。京焼きであった。価格は確か6500円だったか。この花瓶がどうしても欲しいというオバァ。しかし予算オーバーだという。溜息をつきながら他の焼き物を手に取って見るものの、やはり、花瓶に惹かれてしまう。
「孫たちにあれこれと買ってあげたから、所持金が足りない」のだそうだ。決心したように彼女は切り出した。「手持ちが5千円だけど、この花瓶がどうしても欲しい。何とかならない?」
店主の機嫌を取りつつ、食い下がる。「色が良い」だの「艶がある」だの商品を褒められて喜ばない店主はいない。ついに「そこまで気に入ってくれたのなら、5千円でお譲りしましょう」。
「あら、そう。じゃ、これでお釣りちょうだい」と出したのは1万円札であった。
「持ってるじゃないかー!」と怒っても、あとの祭り。一度口に出してしまった以上、値下げを取り消すことはできない。
「ありがとねー」
機嫌よくお帰りになるオバァを送り出した店主がポツンと一言。
「またしてもやられた」
オバァは、買い物においては相当したたかである。あの手この手で策略を巡らし、勝つか負けるか、店との駆け引きを楽しんでいる。
【次回】アップロード12月20日
カメさんの好物はケンタッキー
セツさんの忙しい日々
パン屋さんの珍客たち
【注1】ここで言う「オバァ」とは、あくまでも沖縄ガイドの個人的主観によるものであり、沖縄では、身内でもない年配女性に対して「オバァ」とか「おばさん」などという言い方は避けたほうが無難である。年上だと思われる全ての女性には「ネーネー」(お姉さん)と呼びかけよう。これであなたの沖縄旅行はグッとフレンドリーに、楽しくなるはずだ。
【注2】紹介したのは、沖縄ガイドが見聞きした範囲内であり、これをもって「沖縄のオバァとは」と結論付けるのは危険である。色々な人がいる中での、ほんの一部のエピソードにすぎない。