■沖縄のスタジオガラス
沖縄の陽射しに映える鮮やかな色彩、ぼったりとした厚みのある感触、沖縄の青い海から立ちのぼってきたかのような気泡や、水面を思わせる独特のヒビ模様…。
沖縄を代表する工芸品のひとつである琉球ガラスは、独特の技術と発展方法により、いまや全国に知られています。
ガラスの起源は、紀元前24世紀頃のエジプトやメソポタミアの遺跡から出土したガラス玉やガラス棒が世界最古のものだといわれています。
沖縄にガラスが入ってきたのは17世紀頃で、実際に作られるようになったのは明治後期頃とのことです。現在の琉球ガラスは太平洋戦争後に生まれました。
琉球ガラスの出発点は、戦後豊富に出回るようになったコカ・コーラやビールの空き瓶です。色つきの廃ビンを再利用したために出る「色」が、琉球ガラスの特徴となったわけです。
また、再生ガラスならではの独特の厚みと気泡を持っています。しかしこれには、熱に弱いという欠点がありました。
本来ならば不良品扱いなのですが、水差し、デカンタなど駐留米軍からの注文がガラス工房を支えてきました。戦後27年間の米軍統治時代、西洋的なデザインのニーズに応える形で技が磨かれてきたのです。ですから、琉球ガラスのもう1つの特徴が「西洋美」でした。
その後沖縄は日本に復帰しました。観光地としての沖縄がクローズアップされると同時に、南国沖縄ではぐくまれた伝統工芸品もまた注目されるようになったのです。
なかでも、独特の色彩とデザインを持つ琉球ガラスは、南国沖縄を象徴する産品として、本土の人たちを魅了しました。
現在の琉球ガラスは、再生ガラスではなく原料ガラスを使用しています。でも、琉球ガラスの出発点となった特徴は今も受け継がれ、さらに多彩な作品を生み出し続けています。
最近は、「スタジオガラス」と呼ばれる小規模工房で、若手職人たちの手による個性的な琉球ガラスが続々と生まれているんですよ。
例えば、沖縄本島北部にはガラス工房ヴェルムランド、森のガラス館、沖縄工芸村、恩納ガラス工芸村育成センターがあります。
また、沖縄本島中部には宙吹きガラス工房虹、吹きガラス美海工房、ガラス工房清天、吹きガラス匠工房、琉球ガラス工房海風、グラスアート彩工房、尋グラス工房。
本島南部には奥原硝子製造所、琉球ガラス村、琉球ガラス王国工房などが。
石垣島にもグラスアイランドがあります。
これらの工房では独自のデザイン・作風で個性を競い合っています。琉球ガラスに興味のある方は、各地のガラス工房を巡ってみてはいかがでしょう。
また、殆どの工房がガラス作りの体験教室を行なっていますので、あなたも、世界にひとつのオリジナルガラスづくりに挑戦してみませんか?
次のページでは、読谷村「むら咲むら」の体験工房「吹きガラス工房・海風」を写真で紹介しています。
ところで、経験と確かな技術が求められる伝統工芸や職人の世界は、いずれも後継者難だといわれていますよね。琉球ガラスに関しては、その心配がないようです。
なぜならば、沖縄の若者たちや、沖縄のガラス工芸に魅せられて本土から移り住んだ人たちの手によって創意工夫が重ねられ、琉球ガラスは新たな発展の段階に入っているからです♪
次のページはむら咲むら内の「海風」で撮影した写真です。