■ 沖縄移住のために就職活動を放棄
東京出身の四王天さん(26)が沖縄に移住する決意をしたのは2年前です。おりしも大学では就職活動真っ盛り。そのさなかに彼は、沖縄旅行に出かけました。
「沖縄は、どこかに行ったついでに立ち寄るということができないでしょう? 就職してからだと難しくなりますよね。だから、学生のうちに行ってみようと思い立ったんです」
1週間の予定でしたが、台風の影響で彼の滞在は3週間に延びてしまいました。しかもキャンプです。この間、いろいろな出会いがあったそうです。沖縄の人、自分と同じ旅人などなど、人との出会いを通して沖縄を満喫した四王天さん。
東京に戻ってから、沖縄で何気なく買い求めた民謡やオキナワンポップスの音楽CDを聴いていた時、四王天さんは重大な発見をしました。
「沖縄の音楽で分かったんです。民謡だろうがポップスだろうがロックだろうが、伝わってくるものは全て一緒です。それは、世の中がどれほど変わろうと、沖縄は変わらないんだぞという強烈なメッセージでした」
「オレは沖縄に行くぞ!」
就職活動自体を止めた四王天さん。就職してしまえば、色々な責任が伴ってくると考えたからです。沖縄移住の資金を貯めるためにフリーターの道を選びました。
そして2年後、四王天さんが沖縄に移住して約1カ月が経過しました。やっと心にゆとりが出来て落ち着いて来たそうです。原因は東京と沖縄の時差。
いくら沖縄が好きになったとはいえ、東京の動きに馴染んだ心と体です。その感覚があるために人と衝突したり、生活上のギャップを抱えて落ち込んだり……。近頃、自分が沖縄の時間的流れに合ってきたことを感じているそうです。
「ここが最終地点だとは思っていません。臨機応変に対応しながら自由に生きたいので、将来も沖縄にいるのか、それとも本土に戻っているのか、あるいは海外なのかは分かりません」
現在彼は、那覇でバイトをしつつ、移動販売の準備を始めています。
「組織に属して、時間に縛られる暮らしはしくたないんです。それじゃあ何のために沖縄に来たのかってなるでしょう? 別に贅沢したいわけじゃないし、暮らせるギリギリラインが稼げたらいいと思っています。
常にフリーなポジションに身を置いていたい。だから、先輩移住者の仲間に加えてもらって、屋台をやろうと…」
この四王天さんだけでなく、裕子さんにも共通するキーワードが、どうも「自由」のような気がします。やりたいことをやる権利といったらいいでしょうか。
社会の一員として暮らす以上、完全な自由なんていうものはありえないのですが、両者に共通するのは自分の生き方は自分で決める、という強い意思でした。
日本の社会で、人は、束縛感を強く感じているのかも知れませんね。