資産デフレの時代。
全国各地で「温泉旅館の再生」が進められようとしています。
いったい、どんな旅館が厳しいかというと「戦後経済成長期をそのまま引っ張っている旅館」。例えば、首都圏や京阪神から遠い「大型旅館」で、「部屋出し」で食事対応しているにもかかわらず「客数」を確保するために「低単価」の「募集旅行のバス」を受け付けている宿。現時点では、客数アップで何とか生き延びているけれど、過去も現在も主要顧客層である「戦前生まれ世代」の減少にともない、経営悪化が予想されます。
そうした宿は、例えば、宴会場をバイキング会場に改装し、一日三回転の夕食バイキングで、ファミリー層も取り込める7000円のバイキング旅館に転換したり、有料老人ホームとして生き返るという事例も出始めています。
温泉旅館再生のキーワードは、いかに「戦後生まれ世代」を取り込めるかということ。その割に、戦後世代の私たちが行きたくなるようなソフトをもった旅館がまだまだ少ないのが現実です。これから、どんなソフトが受け入れられるのか、第3講座では、「旅館が変わる!」をテーマにお話ししましょう。

第1講座は、「旅館の変遷」
第2講座は、「旅館料金のカラクリ」



【1時限目】「片泊まり」
夕食を廃止した旅館があります。
福島県磐梯熱海温泉の紅葉館きらくや
なぜ、夕食を廃したかというと、世界中で食料が不足しているのに、相変わらず旅館では無駄に量が多く、毎日捨てている夕食を出し続けるのがイヤになったから。
聞くところによると、旅館の残飯は栄養価が高すぎて、家畜が食べたら成人病になるのでそのエサにもならないそうです。一夜限りといって、海老・かに・牛肉といった「赤もの」づくし料理を、余るほどお膳に並べた夕食。実は、それは「貧しさの反動」だったのだと思います。
現代は、豊かになりました。「飽食」から「癒し」へとニーズが変化しています。
仲居さんの接待。ほどほどに間を置いたサービスではなく、「勤務時間内に食事をしてもらわないと困る」「早く客を追い出そう」。そんなご都合主義である限り、嫌われ始めてしまいます。
そんな背景もあって、紅葉館きらくやは「片泊まり(和風B&B)の宿」になり、「夕食提供」と「客室接待」を一切やめたのです。するとどうでしょう。人気はうなぎのぼり。
そして、今度は逆に雨の日や滞在客から「夕食できないの?」の声があがり、今では、希望者は地元主婦の手作り定食や一品料理を楽しめるようになったそうです。
京都でも人気の「片泊まり(一泊朝食)」スタイル。
旅館の都合にとらわれず自由に旅をデザインできます。お仕着せの夕食がないので、連泊・滞在しても負担なし。実に時代に合ったスタイルだと思います。
でも、なぜ増えないかというと「調理場を廃止できない」から。調理師を抱えながら夕食の有無をチョイスされてしまえば、コストは変わらないのに売上が大きくダウンする可能性が発生してしまいます。そのため、1泊2食が変えられないのです。さらに、街中に出ても料理屋など一軒もなく、さびれています。
それなら、いっそのこと旅館の調理場ごと外に出してしまいましょう。温泉街の空き店舗を料理屋にして調理師さんに店を持ってもらうのです。数軒の旅館で実施すれば、片泊まり宿で温泉を楽しみながら、毎日料理屋を変えて滞在も楽しめるではないですか。
下部温泉>では、そんな取組みも始まっているようです。
全国の温泉地再生のキーワード。その一つが「片泊まり」であるような気がします。
紅葉館きらくやの「ココロ」をぜひご一読を。