箸使いのタブーとは
■箸で茶碗をたたいてはいけない
子供がふざけてお箸でお茶碗を叩いて遊んでいたので「こらっ!お行儀悪いでしょ。」と注意したことはありませんか?これ「たたき箸」と言って、箸使いのタブー。「忌み箸」のひとつです。昔から箸には不思議な威力が宿り、神聖な道具とされていました。ですから箸使いにはやってはいけないNGがたくさんあります。
またお行儀が悪いだけでなく、たたく音が邪気や魔物を呼び寄せので、縁起が悪いとも言われています。「茶碗を叩くと餓鬼が来る」と言うことばを聞いたことありませんか?これも同じく悪霊を招く行為だそうです。
居酒屋で、楽器代わりにお茶碗たたいて調子よく歌っているおじさん。また食堂で、給仕さんを箸でテーブルやお茶碗をたたいて呼んでいませんか?お行儀悪いですよ。いえいえ悪霊にとりつかれたら大変。やめましょう!
骨揚げ(こつあげ)とは 二人一組で1つの骨を拾います |
■箸から箸へ食べ物を渡してはいけない
お箸でつかんだ食べ物を隣の人へ受け渡す「渡し箸」。これも「忌み箸」のひとつで、箸使いのタブーとされています。火葬場での骨揚げといって、故人の遺骨を拾う時、二人で同時に箸でつかんで骨壷に入れたり、箸渡しで入れるので、それを食事の場で行うことは、縁起が悪いのです。死者をイメージする作法はタブー。
※骨揚げの儀式で行われる箸渡しの意味とは?
故人の遺骨を拾うことは、死に直接触れてしまい、その穢れも一人で背負うことになります。他の人に遺骨を箸で渡したり、二人同時つかむなら、この穢れも半分に減らせられるのです。
※やってはいけない箸使いには、同じような意味で「仏箸(立て箸)」があります。ご飯を持ったお茶碗に箸をそろえて突き立ててはいけません。これも死者の枕元に供える枕ご飯。死者をイメージする作法はいけません。
いかがでしたか?日本のしきたりとは、以前からずっと行われていた慣わしや慣習のことです。長い歴史の中で時間をかけて培(つちか)ってきた大事な日本の文化そのもの。そして、してはいけないわけは、必ず何か理由があるはずです。そのためにも正しい作法、意味や由来を知っておくことです。
今回は「なるほど!民俗学」新谷尚紀/著編
「日本人の禁忌」新谷尚紀/監修
を参考文献とさせていただきました。