山内昭善裁判長は小林被告がガソリンスタンドで働いた経験があることなどを挙げ「ガソリンを主成分とした混合油を約4リットルも床にまいた。点火すれば従業員らが焼死する危険性があったことは容易に認識できた」と指摘。
「現金の要求を断られ『どうにでもなれ』との気持ちで放火している。これは従業員らに殺意を持っていたと認められる」との判断を示し、小林被告と弁護側の「殺意はなかった」という主張を退けました。
なかでもショックを受けたのは、非常階段が「常識的にあると思う」という小林被告の言葉。いったい、何を基準にそう思ったのでしょうか? 小林被告のいう常識とはどのようなものなのでしょうか? 非常階段や避難梯子を、常識として受け入れるほどの防災への関心があったでしょうか。
私は、年間に数千件の住戸や企業、ビルなどの防災設備をメンテナンスしていますが、「歌舞伎町の火災」
以前に、非常階段の有効性を「常識」として捉えている人は一握りだと思っていました。
小規模なビルや雑居ビルで、二方向避難が出来る建物は非常に少ないのです。例え、出来たとしても避難梯子などの避難器具によって避難経路を確保しているところもあります。
避難器具では、今回のような猛烈な火の手が上がるような火災では、まず全員の避難は不可能でしょう。常に扱っている私でも、避難器具の組み立てや設置には、数分を要します。
唯一、避難ハッチならば、円滑な避難が可能でしょう。
このような実情で、「常識」として避難階段があると考えている犯罪者がいるということは、とても恐ろしく思いました。
【判決】
裁判官は、「殺意は未必的なものに留まること、一応反省もしている。前科もない。それでもなお、あまりにも重大。焼死者5人、負傷者4人を生じさせた罪責は限りなく重い。
生命をもって償わせるのが相当、一般予防の見地からも、被告人に対しては死刑をもって臨まざるを得ない。」として、求刑通り死刑を言い渡しました。