▼ ハロンガス消火設備使用で消火。500人避難
-5月21日午後3時半ごろ

東京都千代田区にある「丸の内センタービルディング」で、6階の電源室から煙が出ているのを発見した従業員が、ハロンガス消火装置を作動させ消火。
原因は電源室にある非常用発電設備の、配線部分からの出火。
地上20階建てのビルには、5階から12階まで「みずほホールディングス」が入居しており、6階のみずほホールディングスの社員約300人と別の会社の従業員、合わせて約500人が自主避難しました。

上記のニュースをご存じでしょうか?
このニュースを見た方々から、いろいろなご質問を頂きました。一般的には知られていない設備だけに、設備への心配の声がとても多く、解説が必要だと思いましたのでご質問等を反映させながらご説明いたします。

この消火設備は電気室や駐車場、通信機器室などに設置されており、皆さんが思っている以上に我々の生活の身近にあります。基本的には水や粉末を使用すると、その建築物の機能が停止してしまったり、貴重な資料、データを破壊されてしまう恐れのある設備の消火に効果を発揮するガス系の自動消火設備の一つです。

一般の方々にはほとんど知られていないと思いますが、ビルの警備や設備の管理をされている方々の中にも、たびたび死亡事故でニュースに登場する『二酸化炭素消火設備』と混同されている方が多く、もう少しこの設備への理解と関心を持って頂きたいと思いましたので、消火までの流れから取り扱いや、注意点、どのような設備なのか? などをご説明したいと思います。
ニュースでは「ハロンガス消火設備」と紹介されていましたが、正しくは『ハロゲン化物消火設備』といいます。ここでは、『ハロゲン化物消火設備』の中でも、現在主流となっている『ハロン1301』についてお話ししていきます。

この設備は安全性を考えて、原則としては人が操作して火災現場に放射する『手動式』での起動方式なのですが、常時人がいない場所や自動で放射しないと効果がないと判断された場合は、火災を感知する設備との連動による薬剤放射が可能になります。
もちろん、その場合でも『自動』と『手動』の切り替えが出来ますので、なんらかの理由で自動消火がされなかった場合でも、火災を発見し、初期消火が不可能だと判断した人が手動で操作することも可能です。

ただひとつの欠点を除けば、この設備ほど理想的な消火設備はありません。利点としては、冒頭で触れたように消火薬剤に粉末や水を使用しないため、消火活動には不可欠(?)な、消火後の汚損や水損が無いのです。
消火設備の分類としては、ガス系消火設備となり、配管などを見ただけではたびたび死亡事故が報じられる、二酸化炭素消火設備との区別がつきにくい設備です。消防法による設置基準も、いくつか同じ法令が適用されています。しかし、ハロゲン化物消火設備と、二酸化炭素消火設備には大きな違いがあります。

なによりも違うのは安全性。
ガス系消火設備は、消火の対象になる場所(部屋)に消火剤を放射する前に、自動閉鎖装置などにより密閉した区画を作り上げ、区画内の広さにあわせて計算された量の薬剤を放射します。二酸化炭素消火設備(不活性ガス)は、その区画内での酸素濃度を下げる希釈効果と同時に、放射の際に発生したドライアイスの冷却効果によって消火します。空気中の酸素濃度が低くなることで、人間も窒息してしまいますが、二酸化炭素自体も人体に対して毒性があり、濃度が高い時は、ほんの数回の呼吸でも死に至ります。

これに対し、ハロゲン化物消火設備の薬剤『ハロン1301』は、誤放出などで空気中に放射された場合でも人体に対してほぼ無害です。といっても、実際には独特の臭いがあり、これを吸い込んで気分が悪くなったという報告もあります。もう一つの特徴として、ヘリウムガスを吸い込んだように異様に声が高くなるという事があります。
「消火ガスが放射されましたので、念のため避難してくださ~い。と、『ゲゲゲの鬼太郎』に出てくる目玉親父のような声で避難誘導しても、緊迫感などありません。間抜けなだけでした…。」(体験者談)

空気中に放射されただけならば、上記の問題だけですが、『ハロン1301』が火と化合すると臭気を発生させます。今回の大規模な自主避難は、この臭気が問題になったのだと思います。
次ページでは、少し難しい話になってしまいますが、この消火剤の説明と危険回避のための「安全対策」はどのようなモノなのかをお伝えします。