6月18日午後6時45分ごろ、大阪市中央区淡路町3-5、大阪埼玉ビル(9階建て)1階、無人の「あさひ銀行大阪営業部御堂筋出張所」で現金自動預け払い機(ATM)コーナーから「ボーン」という爆発音とともに炎が噴き上がり、周囲のガラスが粉々に飛び散るという爆発火災が発生しました。
爆発当時、現場にはガソリンの匂いが立ちこめており溶けたポリ容器や電動ドリルが残されていました。犯人は約20リットル入るポリ容器にガソリンを入れて現場に持ち込み、ATMコーナーに散布した後、なんらかの原因でガソリンに引火し爆発したのです。
現場となったATMは午後7時に閉店する予定で、通常は時間になるとアナウンスが流れ、自動でシャッターが閉じるようになっています。その時は警備員や職員の巡回はなく、予定時刻になっても客がいる場合のみ、異常を知らせる信号が警備会社に発信され警備員が巡回に来る(この時にはシャッターは閉まりません)事になっています。清掃員についても、当日の清掃予定はなく、普段は近くの支店の行員が不定期に夕方頃行っていたようです。
しかし、事件の約5分前(閉店20分前)「メンテナンス中につき使用できません」という張り紙がガラスに張られ、中で作業着姿の男がモップをかけていたところが目撃されていました。
この火災で4人の重軽傷者が出ており、当初は全員が事件とは無関係で巻き込まれてしまったという見解でしたが、捜査が進むにつれて事件は新たな展開を見せ始めました。
爆発したときにただ一人ATMコーナーにいて、火だるまになって中から出てきた36歳の警備員の男性が事件に関与している疑いが強まったのです。
現場前に止めてあった乗用車が、この爆発で被害に遭っていた事と、犯人の足取りからみて現場付近には犯人の車が残されている可能性がある為に、大阪府警は付近の車を調査していました。結果、その中の一台が、被害者と思われていた警備員の所有する車だとわかりました。調査が進むにつれて車内から、少量のガソリンの残ったポリ容器と現金約2500万円が出てきました。現金には日本銀行の帯封がついていました。さらに、爆発現場に残されたポリ容器と車に残された容器が同じ物だということもわかり、ポリ容器2個と携帯用電動ドライバーの領収書も、車内から見つかりました。
この男性は今年の2月1日に、爆発火災の現場となったこのATMに現金を補充する際に作業に加わっており、現場にも機械にも精通していたのです。ATMコーナーには2台の防犯ビデオが設置されており、大阪府警によって確認が急がれていましたが、爆発で損傷したと見られていたテープは、映像が突然真っ黒になったり、電波障害が起きたようなノイズがはいったりしており、人為的にビデオが映らないように細工してあったことがわかりました。
事件の前日17日の映像にも、ほぼ同時刻に同じような現象がおきていました。この日は別の警備員によるATMへの現金の補充作業が行われていましたので、補充後を狙って犯行に及ぼうとしたが、なんらかの原因で計画が失敗し、犯行を断念したとみられています。
これらのことから、ガソリンをまいたのは、ATMが襲撃されたように見せる必要があっただけではなく、防犯ビデオの破壊も考えてのことだと思われます。携帯用の電動ドライバーについても、この警備員は現場となったATMの構造にも熟知している為、電動ドライバーではATMから現金を取り出すことは出来ないことを知っているので、襲撃を装う為に持ち込んだ物と思われます。
しかし、何らかの原因で発火してしまい、犯人であろう警備員は火だるまになってしまいました。この警備員、救急隊員に搬送される際「作業服を着た男が不審なうごきをしていたので、注意をしようとしたら爆発した」と話していたそうです。