火事が起きた時に、真っ先に考える消火設備と言えば、やはり消火器ですね。 消防設備士として私が点検する項目の中には当然消火器も含まれています。しかし、点検の時に、一番発見に苦労するのも「消火器」だったりするのです。

半年に一度、「法定点検」としてお客様のビルなどへ行ってみると、以前の点検時にはあった場所から消火器が消えていることがよくあります。そこに設置されていることを告げる設置表示プレートはあるのに、肝心の本体がないのです。そんなときは、お店の人やそのフロアーの人に「何処にあるのでしょうか?」と尋ねてみても、覚束ない返事しか得られないものです。

ご家庭や仕事場などにあって当たり前の消火器は、平和な日常の中では邪魔もの扱いされるものであり、月日が経つにつれて、忘れ去られてしまうのではないでしょうか?

そうした疑問を裏付けるようなデータが実はあります。

東京消防庁が官内で行った昨年度(平成12年度)の火災実態調査によると、1,921件の火災では、建物に消火器が設置されていたことがわかっています。そのうち、消火器の使用が必要だろうと思われた火災は1,199件だったのですが、実際に消火器を使用できた例は624件しかなかったのです。この数字から、半数以上が使えていることを上出来と見る人がいるかも知れません。しかし、消火器があって、それを使う必要がありながら、使えなかった例が半数近くまで達していると見るべきでしょう。この数字は多過ぎます。

では何故使用しなかったのでしょうか?

平成11年度に消防庁が行ったアンケートにその疑問の回答がありました。

《火災で消火器が使用できなかった理由》

1位:91件 使用しようとしなかった
2位:85件 施錠のため建物内・室内に入れない、または入るのに手間どった
3位:45件 濃煙が充満していた
       延焼拡大していて使用しても効果がないと思った
4位:26件 あわてていて使用できなかった
5位:21件 出火場所がわからなかった
6位:19件 天井裏・ダクト等の消火困難場所から出火、または火が入った
6位:19件 詮置場所がわからなかった
7位:19件 設置してあることを忘れていた
8位:18件 設置してあることを知らなかった
9位:57件 その他
                           
1位の「使用しようとしなかった」が91件で、全体の12.6%を占めています。その内訳を見ると、共同住宅が53件も占めていました。このうちの33件は、ぼやで消し止めていますが、残りの20件では火災発生部分以上に被害が広がっています。せっかく被害を最小限に抑える手立てがありながら、まったく使用しなかったのです。

以上のような結果を見ても、日頃から消火器を適切に扱うことの大切さがおわかりいただけると思います。まず火災のときにすぐ手に取れる場所へ設置しておくことが大事です。更に慌てず使用できるように、事業所や地域で行われる防災訓練に参加して、使用方法を習得しておけば万全でしょう。

火を見たら、消火器に手が伸びるようにしておきましょう。

<関連サイト>
平成12年中の火災概要(東京消防庁)
平成11年中の火災概要(東京消防庁)
<写真提供>
東京消防ファン

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