病気の治療は、熱帯魚を飼育する上で、避けては通れない問題。犬や猫と違い、魚には専門の病院がありません。ですから、自ら診察を行い、治療投薬の判断をしなくてはなりません。しかし、慣れないうちは、病気の判断が難しいもの。間違った対処を施し、治療のつもりが逆に死なせてしまったなどのケースも良く見受けられます。

水槽飼育における病気の発生は、その殆んどが人的原因に拠るものです。良好な飼育環境下では、病気は余り発生しません。ここでは魚の病気と治療について、原因から対策までをよく水槽内で発生する病状を挙げて解説していきます。

熱帯魚が病気にかかる原因


病気発生の原因の多くが、

  • 水質の悪化によるストレス
  • 水換えや新規に魚を導入した際の水質の急変
  • 急激な水温変化
  • 魚の持ち込み、また病原菌が含まれた水の持ち込み
  • アミで掬った、ケンカなどによる外傷から細菌の感染

などが考えられます。

病気を治療する際には、それら根本的な原因を取り除く努力が大切です。つまり、病気に感染したからといって、闇雲に薬を使用するのではなく、その発生原因を究明する事が重要です。原因究明を怠っては、例え完治したとしても再発の恐れが拭い去れないからです。

これは経験的な事になるのですが、ある程度の飼育レベルを持ったアクアリストであれば、余程の重症魚でなければ薬を使用せずに直してしまいます。魚に限らず生き物全般には、本来備わった自然治癒力が備わっています。それを最大限に活用するのです。

なかなかイメージとして伝わらないかも知れませんが、例えば、状態良く水草が繁茂する環境に白点病に罹った病魚を入れると、余程の重症魚でない限り完治してしまいます。これは、他の症状についても同じ事が言えます。


病原菌が蝕む力 < 魚の治癒力


つまり、良好な環境下におく事で、魚が本来持つ『自然治癒力』を引き出したと言えるでしょう。この事から病気の予防において、飼育環境がいかに重要か伺い知れます。逆に言えば、余り好ましくない環境においては、魚がストレスを感じ、免疫力の低下から病気に罹りやすくなるとも言えます。

魚病薬の使用に当たって


ここまで病気発生の根本的な原因について述べてきましたが、ここからは病気の治療について知っておかなければならない事について述べていきます。

一般的に観賞魚の治療には、飼育水に薬品を溶かし、1、2週間程度の薬浴をさせる方法がとられます。その他にも直接薬品を餌に混ぜて与える経口投与。短期間に、強い薬液による薬浴を繰り返す方法などがありますが、一般的ではありませんのでここでの言及を避けます。

薬浴の効果には、体表に蔓延る病原菌の駆除のほかに、水中に存在する病原菌、また鰓から薬効成分を吸収し体内の病原菌を駆除する効果があります。

薬浴する際の注意点を、以下にまとめます。

濾材に活性炭やゼオライトなどの吸着濾材を使用している場合、それらを取り除く。

吸着濾材は、薬品の有効成分を吸収してしまうので。

水草は取り除く!
薬の成分によって、水草は枯れてしまい、水質の悪化を招きます。飼育槽に薬品を投与する場合、水草があれば必ず取り除きます。
殆んどの薬品は、水草を枯らしてしまうので、投薬前に水草を取り除く。

多くの薬品には、その成分として塩化ナトリウム(塩)が含まれ、植物にダメージを与えます。


水換え
効率良く治療を行うため、治療前には水換えを。
投薬前に1/2~1/3の換水。ろ材を新品のウールだけに交換。

水を換えることで、水中に漂う病原菌を少なくし、治療効果を高める。また投薬により、多くのバクテリアが死滅してしまうので、水質悪化を引き起こす原因とならないためにも投薬前の換水、濾材の交換は必須。


太陽を避ける
太陽光は、薬の成分を分解してしまため、水槽を新聞紙などで覆うとより効果が持続する。
投薬時は、太陽光を避ける。

太陽光により多くの薬品は、その効果を失います。グリーンFなどの成分に代表されるメチレンブルーなどの色素剤、グリーンFゴールドなどの成分である抗菌剤であるフラン剤は、光により分解されてしまいます。


それでは、水槽内でよく発生する病気をいくつか挙げていきます。

白点病


熱帯魚を飼育する上で、最もポピュラーな病気の1つに白点病が挙げられます。その名の通り、魚の体表、ヒレ、鰓などに白い点状の白点虫が付くため、症状を把握しやすいのが特徴です。

白点病の発生は、魚が何らかのストレスを受けた場合、または、既に白点病に寄生されている魚を水槽内に持ち込んだ事などで発生します。水温の急激な変化も発病原因となります。

白点病の特徴の白い点状に見えるものは、白点虫(イクチオフチリウス・ムルチフィリス Ichthyophthirius multifiliis)が表皮の内側に寄生した状態にあります。その際、白点虫は、寄生した個所で回転運動を繰り返し魚体に強い刺激を与えるため、ものに体を擦りつけるような行動がみられます。

【治療】
市販される魚病薬「グリーンF」「メチレンブルー」などでの、薬浴が有効です。その際、白点虫は高温に弱いので水温を28~30℃程度に上げての薬浴が効果的です。本病の治療は、その体表にみられる白点虫に対しては有効ではなく、水中に漂う白点虫の仔虫を駆除することにあります。これは、白点虫の生活史が

栄養体(魚に寄生している状態) → シスト → 仔虫


と変化するため、薬剤が有効な仔虫の段階で駆除することが必要です。その際、「魚病薬の使用に当たって」を参考に3日~1週間の間隔で症状が見られなくなるまで2、3回投薬を行ないます。投薬ごとに1/3程度の換水を行なって下さい。

ある程度、水質管理(水槽環境)に自信がある場合、薬品による治療を行なわなくても水温を28~30℃程度に引き上げ、若干(1/4~1/5)量の換水を行なうだけで完治させることも可能。ある程度のスキルがある場合は、その後の水槽の立ち上がりなどを考えるとコチラの治療の方が有利。中級者以上にお勧めです。

尾ぐされ病


尾ぐされ病は、フレキシバクター・カラムナリス(Flexibacter Culumnaris)と呼ばれる細菌に感染することにより発病します。その感染部位が尾ヒレの場合「尾ぐされ病」と呼ばれ、また口に感染すれば「口ぐされ病」、鰓では「鰓ぐされ病」などとも呼ばれます。その発生は、ストレスによる免疫力低下、他魚に突付かれた事による外傷などが1次要因となります。グッピーやエンゼルフィッシュなど、尾ビレの長い魚がよくこの病気にかかります。

感染初期の段階では、ヒレの外縁が白くぼやけたように見え、症状が進行するとヒレが溶け落ちてしまいます。病状が進行すると、余り泳がなくなり、水槽隅などでじっとしているようになり、やがては斃死。感染力が強く、病状の進行が早いため、早期発、見早期治療が望まれます。他魚からの攻撃を受けている場合、速やかに隔離を行ないます。

【治療】
本病には、「グリーンFゴールド」「パラザンD」などの細菌性疾病に効果のある薬剤での薬浴が有効。重症魚の治療は事実上困難なため、初期の段階での薬浴の必要性がある。

カラムナリス菌への感染の場合、速やかに細菌性疾病に効果のある薬剤での治療が必要。進行が比較的早いので、見つけ次第、直ぐ薬浴を行うようにする。

水カビ病


ミズカビ病
頭部と腹部の一部をカビに侵されたクローキンググラミィ。外観から判断しやすい、病状といえる。
その名の通り、体表にカビの一種が感染する症状。何らかの原因による外傷が1次要因となり、その部位に菌が感染することに拠り発生する。

【治療】
「メチレンブルー」「グリーンF」に拠る薬浴が有効。症状が完治するまで1、2回投薬を繰り返す。

体の一部にカビが付くことから、比較的初期の段階で発見しやすい。直ちに薬浴を行なえば、それ程怖い病気ではない。


※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
※ペットは、種類や体格(体重、サイズ、成長)などにより個体差があります。記事内容は全ての個体へ一様に当てはまるわけではありません。