子犬時代は実に多くを学ぶ時期
将来よきパートナーとなってもらうためには、子犬の時期の接し方や環境がとても大切。 |
犬の“社会化”、この言葉も徐々に一般に浸透してきた感がある一方で、それに対してうまく対処しきれていない現実があることも否めない現状です。それは一つには、犬達が、私達が思う以上に速いスピードでその犬生を歩いているという現実に、私達がうまく追いついていけてない、ということがあるかもしれません。
では、その成長スピードとは、いったいどのくらいのものなのでしょう? 次にそれについて簡単にご説明しましょう。
犬の成長期を、いくつかの段階に分けるとすると、以下のように分けることができます(以下の数字はだいたいの目安です。専門家によっては細かい数字について若干のズレがあることを心おきください)。
1.出生前(母犬のお腹の中にいる間)
2.新生子期(生まれおちた日~生後12日くらいまで)
3.移行期(生後12日くらい~生後3週齢くらいまで)
4.社会化期(生後3週齢くらい~生後3ヶ月くらいまで)
5.若年期(生後3ヶ月くらい~性成熟する頃まで)
6.成熟期(性成熟以降)
全てにわたって大事に過ごしたい成長期
この中で最も社会化に適している時期とされるのが、4番目の生後3週齢~生後3ヶ月くらいまでの間にあたる“社会化期”です。この社会化期の中の、生後8週齢前後で受けた様々な刺激・体験は後の成長に最も大きく影響すると言われ、特に大事な時期と捉えられています。よって、生後3ヶ月までの間に、どんな環境で、どんな経験をして育ったかが、犬の一生にとって大変重要になると言われていますが、もっと言えば、少なくとも生後8週齢前後までの間にどう育ったかが最も重要になってくるということ。
しかし、大切なのはなにもこの“社会化期”だけではありません。人間の赤ちゃんでも胎教という言葉があるように、お腹の中にいる子犬にも母犬の肉体的及び精神的健康度は影響します。
まだ目も見えず、耳も聞こえない新生子期にあっても、母犬や兄弟、人間とより多く触れ合った子犬は、ストレスに対しても強い子になり、発達が早いと言われます。移行期になると体の感覚器などが発達してくることから、外界からの刺激に対しても反応するようになり、少しずつ多くのことを学ぶようになるでしょう。
そして、社会化期を過ぎると、それまでの好奇心より警戒心や恐怖心の方が勝ってくるので、より多くの経験をさせてあげたい時期となります。また、成長するごとに咬む力も強くなってきますから、生後4ヶ月半~5ヶ月齢くらいまでには、咬みつきの抑制ができていることも望まれます。そのためにも、兄弟や他の犬とたくさん遊んで、どのくらい咬むと相手が痛がるのかということも学んでいく必要があります。
青年期に入るともう覚えることもない、しつけも無理だろうと思ってしまうのは間違い。犬はいくつになっても学ぶ力を持っています。ただ、一生を通して時期により、その吸収力の密度が違うということです。
このように、犬は人間に比べ、短い時間の中で、目まぐるしく成長していくのです。
繁殖者の責任、飼い主の責任
さて、子犬を迎えると考えた時、生後2~3ヶ月齢くらいで連れてくるケースが最も多いのではないでしょうか。ということは、子犬にとって最も大事な時期と丁度重なるということです。それを考えれば、プロであれアマチュアであれ、子犬を譲り受ける先がどう子犬達を育て、接しているか、ということは子犬を選ぶ際の重要なポイントにもなるでしょう。社会化期をうまく過ごせている子犬は、気質的にもより安定しており、将来、問題となる行動を起こす確率もぐっと減るのですから。
ですので、子犬を選ぶ際には、子犬を見るより、まずは繁殖者もしくは世話をしている人とその環境を観察した上で、どういう考えの基に繁殖をし、犬達のケアをしているのか話を聞いてみるのが賢明でしょう。もし、他の犬や人間とあまり接触することなく孤立して子犬が育てられていたとして、そしてその子犬をあなたが譲り受けると決めたとしたら、それまでの足りなかった社会化期の分を、あなたが一生懸命補ってやる必要があります。
うまく社会化がなされて育てられてきた子犬であったとしても、そうでない子犬であったとしても、前項で説明したように、子犬を自分のところへ連れてきた後も引き続き社会化は必要ですから、その後の社会化については、新しく飼い主となるあなたの手にかかっているのです。
犬のことを何も知らずに飼う怖さは、一つにはここにあると言ってもいいでしょう。知らないがゆえに、一番大切な時期を潰してしまうことも考えられます。是非、多少なりとも知識を蓄えてから犬を飼って欲しいと願う理由はここにあります。
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