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珍しい犬種シリーズ「ボーダーテリア」の巻(2ページ目)

シリーズ「珍しい犬種に会いたい」、今回はボーダーテリア。家畜をキツネから守る番犬として飼われていたこの犬は、自立心に富み、自己主張の強い犬。そんなちょっと気むずかしいボーダーの魅力に迫ります!

執筆者:坂本 光里

マニュアルが通用しない犬

2頭の先住犬のいる今泉家に新参者としてやってきたケイトちゃんでしたが、兄弟犬たちとくんずほぐれつ育っていたことから、物怖じする様子はまったくなし。ケージを開けたとたん、ボニーちゃんにいきなり体当たりをかまして、それまで女王様だった彼女に先制パンチを放ったとか。

「一番下で好き放題にふるまっていたボニーにしてみれば、『あなた、いったい何様のつもり!』というのが第一印象だったのでしょうね。それを引きずっているのか、ボニーは今でも常にケイトと一定の距離を置いている感じ。でもシュナのジャニスの方はというと、ケイトが来てから急に若返って、一緒に遊んだり走り回ったりするようになりました。まあ、そんな個性ある3頭がいて、いつも賑やかな我が家です」(今泉さん)


しかしながら、一歩外へ出たときには家の中と同じというわけにはいかないと思った今泉さんは、ケイトちゃんにしっかりトレーニングを入れることにしました。ボーダーテリアにしても、トイマンチェスターテリアにしてもなかなか見かけることの少ない犬種ですから、その子が外でわがまま放題をしていると「あの犬種はああいう性格だ」というレッテルを貼られてしまう。それはこの犬種を心から愛している人間としての本意ではないと思われたのだそうです。たしかにそういう意識って、飼い主にはとても大切なことですよね。

img2こう見えて実はなかなか
したたかな奴「ところが、ボーダーテリアは私が子ども時代から一緒に暮らしてきたどの犬種とも違う、今までのしつけの常識がまったく当てはまらない犬でした。しつけには褒めてしつける、ときには叱って厳しくしつけると、いろいろな方法がありますが、ケイトの場合はそうしたマニュアル通りのやり方が通用しないんです。
たとえばミニシュナのジャニスは、私が『いけない!』と叱ったり、表情を変えただけでも敏感にそれをキャッチしてしおらしくなったりしますが、ケイトは叱られようが、威嚇しようが、まったく反応がない。いつもニコニコしてるんですよ。いったいこの子は何を考えているんだろうかって、思いましたね」(今泉さん)

その子の個性を認めて、その子だけを見る

こう書くと、誰もが「ああ、訓練の入りにくい犬種なんだな~」と思いがちですが、実はそうではありません。
今泉家に来て1年半が経った頃から次第に自我が芽生え始め、売られたケンカは買うようになってきたケイトちゃんの行く末を案じた今泉さんは、彼女と一緒に近所のトレーニングスクールに通うことにしました。ところがそこでのケイトちゃんは、ゴールデンやラブラドールなどよりも先にどんどん課題をクリアしてしまう。そして他の犬たちが段階を踏みながら課題をこなしている最中に既に飽きてしまう。そのうち「それは知ってるけど、飽きたからやりたくない」という気持ちが起きて、家に帰りたがるそぶりを見せるのだそうです。

覚えは早いけどすぐ飽きてしまうのが
玉にキズ
なんな簡単なことばかり
繰り返すんだったら、もうやらない!

「コースを終了した時点で、その成果を試す意味で、訓練試験を受けてみたいとトレーナーの方に相談したら『ケイトは何でもこなせるけど、全部そこそこだからね~』と軽く言われちゃいました(笑)。だけどどうしてもあきらめきれなくて、別のトレーナーさんにそのことをお話したところ、『ボーダーテリアは覚えは早いけど持続性がないから、コツコツと積み上げていくことが大切。他の犬種と比べると凹むから、あまりまわりを気にせずに、その子の個性を認めてその子だけを見るようにしてください』というアドバイスをいただいた。それで目からウロコというか、ボーダーテリアという犬を見る目が変わりました」(今泉さん)
ボーダーテリアは、自分で考えた上で納得して自発的に行動する犬種。飼い主は意識的にそのように導く必要があるということですね。

自立心の強い犬には、自分で考えさせること

頭がよく訓練能力も高い一方で、ガンコで自立心の強いボーダーテリアに、教えたことをいかにうまく発揮させるかはリーダーである飼い主次第。そのためにも飼い主はこの犬種のことを深く理解しなければなりません。考えてみれば、巣穴に追い込んだキツネを主人が来るまでどうするかを自分で考え、実践してきた犬なわけですから当然ですよね。


「ケイトはパピーの頃は、人間にも他の犬にもフレンドリーで上手に遊べる子でした。ところが1歳半を過ぎた頃から、しっかりボーダーテリアらしい気質が出てきました。そうなると、そこから新しいことを教えるのは大変。今までは自由に散歩していたのに、急に前に出るなと言われるのって、犬だって嫌じゃないですか。そんなことを繰り返しているうちに、ボーダーテリアと飼い主との距離がどんどん離れてしまって言うことを聞かない子になり、最終的に手放すことになる。実際そうしたこともあるようです」(今泉さん)

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取材中に出会ったノーフォークのパピーと上手にご挨拶

これは貴重なアドバイス! 飼い主はまず自分が飼う犬種のことをよく知らなければいけないし、きちんとした犬にしつけるためには自我が発現する前、つまり生後1年以内がとても大切な時期であるということ。これはボーダーテリアに限らず、どの犬種にも等しく言えることだと思います。 「ケイトを飼い始めて、多くのことに気づきました。ああ、自分はまだまだ犬のことがわかっていなかったんだなと。私は5年かかりましたが、今になってようやくケイトのことを普通の犬として見ることができるようになりました」(今泉さん)。

-->>続いてボーダーテリアとの暮らしについて

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