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『狩人と犬,最後の旅』に学ぶ人と動物の絆

『狩人と犬,最後の旅』は、冒険家でもあるフランス人監督ニコラス・ヴァニエが、ロッキー山脈に生きる最後の狩人と犬たちの暮らしを追ったドキュメンタリータッチの映画。その見所はというと……

執筆者:坂本 光里

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最後の狩人に引退を撤回させたものは?

『狩人と犬,最後の旅』は、冒険家でもあるフランス人監督ニコラス・ヴァニエが、ロッキー山脈に生きる最後の狩人と犬たちの暮らしを追ったドキュメンタリータッチの映画。春の雪解けに始まり、素晴らしく短い夏を経て、厳しい冬を乗り切っていく最後の狩人ノーマン・ウィンターの1年を、よけいな感傷を入れずに淡々と描いて、とてもすがすがしい印象を残してくれました。

ノーマン・ウィンターは、この映画のために雇われた俳優さんではなく、正真正銘のロッキーに住む狩人。原題の『The Last Trapper』のTrapperとは、ワナを仕掛けて獲物を捕る狩人のことだそうで、ロッキー山中に住み、それを仕事にしているマウンテンマンは、本当に彼が最後の一人に近い状態なのだとか。
しかしながら森林の伐採によってそこに住む動物たちが減少し、狩人を続けていくことに限界を感じたノーマンは、今年限りでロッキーを去ることを考え始めている様子。その思いは、心から信頼していたリーダー犬のナヌークを交通事故で失ったことでさらに強まっていきますが、気の毒に思った町の友人が新しい犬・アパッシュ(♀)を連れてきたことから、事情ががわりと変わってしまうのでした。

新入りとして犬たちの群れに加えられたアパッシュは、ほんとにダメ犬。なかなか仲間たちと馴染めず、ノーマンの仕事のじゃまにさえなる始末。ところがこのアパッシュが、凍った湖に落ちたノーマンを率先して助けたことから、引退を決め生きる目的さえも失いかけていたていた彼の心に少しずつ変化が出てくる---というのが、この映画の大きな流れですね。

人間はこんなに強くなれる

大自然の中で犬も人間もほんとにたくましい!
見ていてほんとにすごい!と思ったのは、トナカイの群れの吐く息の白さでも、大空に舞うオレンジ色のオーロラでも、山と湖水の美しさでもなく、冷徹ともいえる大自然の厳しさの中で何でもたった一人で乗り切っていくノーマンの超人的なパワーと根性。彼は、危険きまわりない急流をカヌーで下ったり、凍った湖にそりごと落ちたり、急な崖から転落しそうになったりしますが、自分自身の力でその局面を乗り越え、ログハウスなども妻と二人だけでつくってしまったりします。
危険な場面になるたび、わたしなどは思わず腰が引けてしまいましたが、そのうち「彼ならどんな山も超えていくだろう」と信頼するようになっていきました。はるか彼方にうっすらと見える山脈を見ながら、淡々と「明日はあの山の向こうに行く」などと言われても、この人ならやるだろうと思えてしまうわけです。

人間を支える犬たちとの強い絆

トラッパーはもちろん魚だって捕る、犬も一緒なのに注目!
しかしながら、映画を見ていくうち、あることに気が付きます。ノーマンの強さは、もちろん彼が山で生きてきたマウンテンマンだからこそなのですが、そのパワーがどこから来るのかといえば、それはやはり彼を支える妻のネブラスカであり、犬ぞりを捨ててスノーモービルに乗り換えた狩人の友人だったり、新しいログハウスの窓を気軽に持ってきてくれる町の雑貨店主だったり…そして、なにより彼をリーダーとして慕い、心から信頼する犬たちの存在だったりするわけです。
この映画に込められたニコラス監督の思いは、森林伐採で消えゆく森と狩人に対する哀惜の念、自然破壊に対するアンチテーゼだと思うのですが、それよりもわたしが強く感じたのは、「人間はひとりでは生きられない」んだということでした。妻がいて、友がいて、犬たちがいて、亜初めてノーマンは大自然に生きる“強い男”なれるんですよね!

ロッキーの素晴らしい大自然を見るだけでも一見の価値あり
-->>「監督インタビュー!」と続きます!

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