ペットの食べ物で、初の認可? 三軒茶屋の商店街に一角にある100CLUBのおしゃれな店舗 100CLUB(ワンハンドレッドクラブ)といえば、馬肉の生食を犬や猫の食べ物として最初に提唱した会社ですが、その100CLUBがこの8月、保健所の営業許可を取得したと聞いてお話をうかがってきました。 世田谷保健所の営業許可証 保健所の営業許可といえば、食品を製造・加工・調理・販売する事業者にたいして、食品衛生法にもとづいた衛生管理・施設管理上の基準を設け、これに合格したものに許可証を発行するというもので、人間の食品をつくったり売ったりする場合は必ずこれを取得する必要があります。 施設基準というのは、調理場や製造所、ショップなどに食品衛生の管理責任者を置き、施設内に手を洗う場所などを設けて清潔を保つといったものですが、人間の食品を扱う店ならともかく、ペットの食べ物を扱っている事業者でこの許可を得ているという話をわたしは聞いたことがありません。 え、そうなの? と思われる人も多いでしょうが、これは意外な盲点。たしかに、ペットフードは犬や猫の食べ物で人間の口に入る可能性はないわけですから、食品衛生法にもとづく営業許可を取る必要がないわけです。食品衛生法は、あくまでも人間の食品にたいして設けられた法律で、ペットフードはその適用外なのですから。 きっかけは、一人の顧客の疑問 自らにハードルを課した川邉さん 100CLUBの商品開発の責任者である川邉剛(かわべたけし)さんは、こんなお話をされました。 「わたしは、自分たちの商品にたいして人間の食品とまったく変わらぬ品質を保ち、雑菌などがつかないよう衛生面でも万全を期していると、ホームページを通じてつねづね言ってきました。そのこともあって、ここ3年は売り上げも順調に伸ばしてきたんですが、あるとき、一人のお客様から『そんなことを言われても、おたくはどこでつくってどんな衛生管理をされているのか明らかにされてませんよね』と言われたんです。わたしはそのとき、ハッとしました。たしかに言われるとおりだと。それで考えたすえ、ペットフードに法律も基準もできないなら、自分たちが人間の食品の対象内に入ればいいと。それが今回の保健所の営業許可を取るということだったわけです」 これはひとつの盲点だったかなと思います。最初からペットの食べ物として生産し、加工しているといえば認可は下りないかもしれませんが、人の食べ物として生産され加工されたものを、ペット用に販売するということなら、認可の対象内になるというわけです。 「保健所のお墨付きということは、衛生面でも安全面でもきちんとしているという証明になる。そうすれば、わざわざ『無添加』とか声高に言う必要もありません。そこで売られているのは、保健所が認めた事業者の扱っている食品ということですから」(川邉さん) たしかに、いまのペットフードには、公的な基準や規制がありません。どんな材料を使っても、どんな合成添加物を使用しても、一般消費者がそれを咎めたり告発したりできるシステムはないのです。ペットフード公正取引協議会という業界団体が自主的な基準をつくって、原材料を多い順から80%まで表示することとしていますが、その残りの20%には何が入っているのか、まったくわからないというのが現実なのです。100CLUBは、そんなユルユルの基準しかないペットフード業の一部だと見られるのを嫌い、みずから食品衛生法という高いハードルを設けたということですね。 どこでつくられ加工されたものかを明らかに 100CLUBの馬肉は北米から輸入 では、これで「衛生面の信用」以外に、どんなメリットが得られたのか? 川邉さんに聞きました。 「ふつうの人は、それがどうした?という感じかもしれませんね。でも、わたしたちにとっては大きな一歩なんです。それはショップが衛生的に万全だということ以外に、100CLUBで扱っている馬肉が、最高級の馬肉を世界中のフランス料理店などに供給しているアメリカのベルテックス社で生産されたもので、それを横浜にある赤塚屋さんという人間の食肉工場で加工してもらっているということを堂々と公開できるようになったことです。最近は、人間の食品でもはやっていますがトレーサビリティといって、どこでつくってどこで加工したかという経歴をすべて明らかにできるかどうかという基準がありますよね。これが可能になった」(川邉さん) ベルテックス社の生産ラインなるほど、日本の国産ペットフードにも、最新鋭で清潔な工場で生産しているというところがありますが、どこに委託しているのか、原材料がどこどこ産かまでは明らかにしていないケースが多い。それというのも、人間の食品を扱う工場には、ペットの食べ物を扱っていることを知られるのを嫌がるところが多いからです。なんだ、あんたの工場は犬猫の食べ物をラインに乗せているのかと言われてしまう…。このことは、心あるペットフードの作り手たちの大きな悩みにもなっています。 国内でオリジナルフードに製品化出荷前のパッケージ風景 しかし、今回100CLUBが保健所の営業許可を得たことで、加工工場も、原材料メーカーも、胸を張って100CLUBに製品を卸していますといえるようになった。赤塚屋は、本来、人間の食品を扱う会社ですから、工場にはもちろん保健所のチェックが入っていますし、原材料メーカーであるベルテックス社はフランス料理の食材を輸出しているわけですから、そこの製品は日米両国の検査・検疫を経ているわけですね。 「これで、100CLUBが扱う馬肉は『人間が食べてもよい』ものですと堂々と言えるようになりました」(川邉さん) これは想像していたよりもビッグなニュースかも…。わたしは、つねづね国産ペットフードにもいいものがあるけど、どこでつくっているのかがわからないものを書くわけにはいかないなあと思っていた矢先の出来事。たしかに、人間の食品衛生法というお墨付きなら、胸を張って「間違いない」とおすすめすることができますね。 続いて、どうして馬肉がよいかというお話12次のページへ