1週間かけてようやく仲間入り
イタリア北部マレンマ地方生まれの大型牧羊犬、マレンマシープドッグに会ってきました。マレンマといえば、アッシュを連れていったヨーロッパ旅行の際に、トスカーナから1日がかりで行ったカンピーリマ・マリッチマのある地方。たしかもとは沼地だったというのをガイドブックで読んだ記憶があったので、エッあんなところに牧羊犬がいたの?という驚きとともに、これもなにかの縁かなと、期待に胸を躍らせながら取材に出かけました。
今回の主役は、シンディちゃん(5月で8歳)とキャンディちゃん(4歳)というマレンマシープドッグの母娘犬。飼い主さんは、田園調布にあるペットショップ「Perrods(ペロッズ)」のチーフトリマーでもある朝倉由喜子さんです。
「シンディとキャンディの本当の飼い主は主人なんです。わたしは結婚してふたりのいるところにやって来た“仲間”のひとりという感じでしょうか。でも、最初に会ったときにはまるで他人扱いでしたから、これでもかなり昇格したんですよ」と、朝倉さん。
最初にご主人の家を訪問したときには、彼女のちょっとした動きにもふたりが同時に反応、ずっと監視されている状態で大変だったとか。動くと吠えて威嚇され、トイレに立つのもままならなかったそうです。「一緒に暮らしはじめて1週間ぐらいして、ようやく仲間として認めてもらえたって感じでした」(朝倉さん)
シープドッグの源流ともいえる犬
聞くところによれば、マレンマはもともと奥深い山の中と沼地を行き来しながら、オオカミから羊を守るのが仕事だった生まれながらのシープドッグ。日本で人気の高いグレートピレニーズもマレンマが源流だそうです。
かれらの日常はといえば、羊たちとともに山奥に放置され、2~3日ごとにパンと水のエサを持った飼い主がやってくるという生活だったとか。羊たちは自分が守らなきゃという自覚の強いかれらに、自分で判断し行動する判断力やテリトリー意識がそなわったのは当たり前といってもいいでしょう。
「お客さんが来るともう大変。吠えて警戒心を露わにします。他人と仲間との間にきびしい線引きがあるんですね。だけど、いったん仲間だと認めると飼い主と同じぐらいの親愛の情を示すこともあります」(朝倉さん)
初対面の人には積極的に側に寄ることはほとんどしないし、警戒心を解くにも時間がかかると言われましたが、わたしはけっこう早くうち解けてもらえたのか、思いきりギュッなんてことまでさせてもらいました。
だけど、これはシンディ&キャンディ母娘がメスだったからで、オスの場合はそういうことはほとんど難しいとか。「ブリーダーさんも、犬飼い初心者にはオスは無理だとおっしゃってましたね」(朝倉さん)
容姿はこんなにかわいいのに、それほど牧羊犬の性格をそのまま残した原初的な犬種がまだいたなんて、ほんとにビックリ。だけど、他人に警戒心が強い分飼い主への愛情は非常に強く、家にいても飼い主の動きを逐一目で追いかけ、少しでも視界から飼い主が消えたりすると必死で探し回ったりすることもあるようです。
「食べることより散歩より飼い主のそばにいることが大事」
「名前を呼ばれたら、どんな離れた場所からでも喜んで駆けてくる」
「ぎゅーっとされると満足そうにいつまでもジッとしている」
う~ん、なんだか一度飼ったらやみつきになりそう……。
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