動いている心臓が3Dでオールカラーで見える
「ほら、動いている心臓が見えるでしょう。これが僧帽弁。この細い弁がゆるくなったり切れたりすると血液が逆流して肺に血がたまり呼吸不全になるわけです」(南先生)
動いている心臓がオールカラーで手に取るように見えます。ガンがどこに、どんな形であるかというだけじゃない。これだと肝臓の門脈シャントや椎間板ヘルニア、はては誤飲した焼き鳥の竹串の状態まで、ありとあらゆる体内の異常が瞬時にしてわかるとのこと。ぼやけたレントゲン写真を1枚1枚撮って「う~ん、よくわからんなぁ。エコーもやってみましょう」という従来のやり方が前近代的なようにも思えてしまいます。だって、1秒間に鮮明なカラー画像が約12枚(旧型の機械だと30分かかる)も撮れてしまうというのですから…(フ~ッと、タメ息)。それに従来のCTのように撮影に時間がかからないということは、麻酔量も放射線の被爆量も少なくてすむため身体への負担もかかりません。
気になるのはお値段のほうですが、基本料が3万6750円、これに体重に応じて1万~3万円程度の造影剤料、8400~1万5750円の麻酔料がかかります。つまり1回の検査は、小型犬だと約5万5000円、30キロ超の大型犬だと約8万円ということですね。ちょっと高めかなと思われる人もいるでしょうが、従来のX線検査の写真1枚の撮影料が3000~3500円(麻酔料別、日本獣医師会調べ)ぐらいですから、10枚で約3万円。枚数計算でいけばリーズナブルですし、なによりその情報量の多さ、正確さはくらべようもありません。いや、確定診断がつかないまま検査検査を繰り返したり、間違った治療や投薬が行われることのリスクを考えればむしろ格安だと言っていいと思うのです。
ニーズの高まりは獣医さんたちも自覚している
しかしながら、ここにこんな素晴らしい診断装置があるということを、地域の獣医さんたちが知り、ひんぱんに活用してくれなければ「動物高度医療診断ラボ」を事業化したベッツホールディングスの売り上げは立ちませんよね。同社の社長である橋本明さんは言います。
「そうなんです。最初はおまえはいったい何者だみたいなことを言われて、なかなか受け入れてもらえませんでした。ですが私自身、ミニピンのチャッピーと暮らす一飼い主として、こうした高度医療は絶対これから必要になるという確信がありましたから、めげずに足で歩いて信頼を得てきました。こちらが一生懸命になれば、世間のニーズが高まってきていることは獣医さんたちもよくご存じですから、うちでも導入したい、近くにあればぜひ使いたいという声がどんどん出てくるようになりました」
橋本さんは「動物高度医療診断ラボ」の事業化を通じて、日本の獣医療を一気にアメリカ並みのレベルにまで持っていきたいと考え、とくに若い獣医さんたちの教育活動にも取り組んでいきたいそうです。
地域の獣医さんたちの診断技術を底上げ
また同時に、セミナーを通じて地域の獣医さんを集めて症例発表会を行うなど、日本の獣医界の技術向上をはかっていきたいとも思っています」
自分の愛犬が難病にかかることを思うと、事業とはいえ社会的な活動をやっているつもりですと橋本さん。なんだか急に目の前が明るくなったような気がしました。
わたし自身は、愛犬がむずかしい病気になったからといって必ずしも高度医療に進むばかりがよいことではないと思うのですが、高度医療を選択するもしないも病気の正体がわからなければ選びようがないのは明らかですよね。
だからなにより必要なのは、やはりできるだけ早期に確定診断がつけられること。それができれば、高度医療を選択するか、動物のQOLを優先するかを飼い主が決めることができるわけです。もちろん現状でも大学病院にはCTがあるのですが、予約が詰まっていれば2週間待ち、3週間待ちとなるのもしばしば。そうこうするうちに早期発見が遅れてしまうことも考えられます。その点、気軽に予約できるCTセンターが近くにあれば、最短で検査が受けられほんとに便利です。
そんなわけで、少しでも早い時期に、多くの獣医さん、いやできればすべての獣医さんがこの「動物高度医療診断ラボ」の存在を知り、むずかしい病気はCTで確定診断をするというのが一般的になってほしいものだと、心から思った取材でした。
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