クリサジークはチェコの歴史と関わりの深い犬。王族や貴族の抱き犬として大切にされ、チェコの国王がヨーロッパ諸国の王族へ外交上の重要な贈り物とした時代もありました。ですが貴族社会の衰退とともに絶滅寸前になり、その復興に着手したのは1960年代、成功したのは30年後の90年3月、たった8頭の犬から出発したとか。90年にはチェコにクリサジーク・クラブが設立され、いまでは首都プラハを中心にヨーロッパ、アメリカの家庭で世界で約2000頭が飼育されています。
しかしながら、2000頭といえば希少犬種であることは歴然。しかも日本では30頭強というのが現状ですからFCIではまだ未公認犬種、したがってJKCでも純血種としては扱われていません。だから血統書はチェコケンネルクラブ(CMKU)の発行となります。
クラブでは一頭一頭、クリサジークの個体番号を管理しており、日本支部に所属する犬も、チェコのクラブから血統書を発行すると同時に個体番号を所有する形になります。希少犬種とはいえ、これってかなり理想的なシステムですよね。
なぜなら繁殖の段階でいろんな血が混じったり(乱交配が防げる)、誰が親なのかハッキリしないという事態は起こりえないから。そんな環境は日本でのチワワやダックスといった人気犬種では望むべくもありません。
ところで日本のクリサジーク事情を見てみますと、彼らが日本に来たのは98年。ナチスに虐待されたチェコの村で世界平和をテーマにアート・ボランティア活動が広まり、そこに参加した日本人彫刻家が現地の芸術家たちから友好の証として贈られたのがプラシュスキー・クリサジークでした。じつはこの彫刻家の娘さんがブリーダーの山口さんなのです。
彼女はご主人の仕事でチェコに移住したのをきっかけに犬種の勉強を始め、現在ではチェコのクリサジーク・クラブの正会員になり、チェコでも3人しか居ないボニタツェ検査員の資格を与えられました。だから正規にクリサジークを繁殖できるのは、2003年現在、チェコと日本の2カ国だけとなっています。ちなみに、98年当時でもチェコで大切に繁殖されてきたため国外へ出ることはきわめて異例のことだったそうです。
ですからもし山口さんのところ以外からクリサジークを購入され、将来繁殖を考えておられる方がいらしたら、ぜひ日本のクラブである「プラシュスキー・クリサジーク・クラブ・オブ・ジャパン(PKJ)」に問い合わせてみてほしいと思います。
次ページでは「ボニタツェ」と飼い方について
触れてみたいと思います。