若い女性の獣医さんも急増中!
犬をとりまく職業の「なるには」シリーズ。今回は獣医さんの巻です。
マンガの『動物のお医者さん』がきっかけになって、小動物の臨床医になりたいという若者が急増したのは10年も前のことですが、以来獣医さんは人気職種のひとつに定着してきました。
なかには人間とうまくコミュニケーションできないから動物と一緒にいられる職業を選んだという人もいて、それはちょっと困りものですが、それを目指す人の分母が増えれば志の高い「よい獣医さん」も増えてくるのは当たり前。
いまは昔のように閉ざされた世界ではないわけですから、飼い主の気持ちをよく理解して一匹でも多くの動物を救おうと努力を続けている若い獣医さんが増えてきたように思います。
獣医さんはこれまで牛とか馬とかを扱う大動物(産業動物ともいいます)を専門に扱う人や、保健所や都庁などのお役所に勤める人、製薬会社に勤める人などが主流だったのですが、ここ数年は小動物の臨床つまり町の動物病院に勤めるという人がグッと増えてきました。
これまで小動物にはそれほど関心を持ってこなかった獣医科大学では、そうした道を選択する人たちのための小動物の臨床教育がまだまだ不十分であることはいなめませんが、これも分母が大きくなってきて大学側も重い腰を上げつつあるようです。
そこで今回は、そんな若い女性の獣医さんのひとりを訪ね、どうして獣医さんを目指したのか、獣医さんになるにはどうすればいいのかを聞いてみることにしました。
お訪ねしたのは東京の田園調布にあるアーク動物病院。ここは田園調布駅から歩いて6分、院長の増川洋史先生以下6人の獣医師と5人のVT(獣看護士)兼グルーマーを抱える中規模クラスの病院です。アークは箱船という意味。多くの動物を救いたいという気持ちを表したのだとか。そのなかで協力いただいたのは広田真由美獣医師です。
Q 広田先生は病院に勤め始めて何年目で、病院内ではどういった仕事をしておられるんですか?
A 卒業後、すぐに小動物臨床の道に入りました。一般外来の診療、入院患者の治療、単なるお泊まりで来ている子の健康管理、診療以外の部分ではありますが、病院内の衛生管理や、薬剤などの備品の管理などもしています。 診療は内科的な部分が多いですが、外科的なことを任されることもあります。
Q 獣医さんという職業を選んでよかったなと思うのはどんなときですか?
A それはやっぱり治療の結果がよくて動物たちが元気になり、飼い主さんに「ありがとうございました」と言っていただける瞬間です。飼い主さんが悲痛な顔をされてぐったりしたワンちゃんとか猫ちゃんを抱えてこられて、その子がどんどんよくなって飼い主さんの顔に笑顔が戻ったとき、ああこの仕事をしていてよかったなと思います。
Q 学生時代にイメージしていたとおりだったと?
A いえいえ、もちろん悪いイメージは持ってませんでしたけど、見ると聞くでは大違い。獣医師は動物を病気から救うという使命があるわけですが、それだけではありません。
なにより飼い主さんの気持ちをわかってあげることが大切、飼い主さんが満足してただけるような医療を提供するということなんですね。
その子その子で治療も違ってきますが、どんなケースでも全力で「治してあげたい!」というピュアな気持ちで取り組んでいます。そういう気持ちで仕事と向き合えるのは喜びです。
Q 広田先生はどうして獣医師になろうと思われたのですか?
A じつはそれほど固執してはいなかったんですよ(笑)。進路を決めるときにも「就職のときに何か資格があったほうが有利かな」と思ったぐらいで。獣医科大学に入ってからも、一口に獣医師といっても、食肉のほうに行ったり競馬場に勤めたり間口は広いので、いろいろ迷っていて、小動物の臨床医になると決めたのは卒業間際でした。もちろん犬や猫などの小動物にかかわる仕事が自分に向いてるなと思ったからですけどね。
Q 獣医さんになるにはどういうハードルがあるのですか?
A まず獣医系の学部のある大学(今は16の大学があります)に入って、そこで6年間勉強し、卒業間近にある国家試験を受けてそれに合格するということですね。でも国家試験に落ちる人というのはごく少数で、わたしの学友たちもほとんど合格しました。不幸にも落ちちゃった人は1年浪人して次の年に受け直すことになります。
合格すれば、ふつうの大学と同じように掲示板にいろんな動物病院から求人が張り出されてますから、それを見て選んで面接に行くということです。