これってサギじゃないのと飼い主の悲痛な声
先日、朝日新聞(9/7号)に犬のガイドとしてコメントする機会がありました。記事のタイトルは「ちっちゃいはずが大きくなった」というもの。つまりミニチュア犬というふれこみで買ってきた子犬が成長するにつれ、どんどんサイズが大きくなってきて、「これってサギじゃないの!?」というトラブルが頻発しているという問題についてふれた記事です。
実際の苦情の内容を見てみると、ブリーダーサイトで30万円前後だった黒毛の豆柴がペットショップで10万円という値段で売られていたことに引かれて購入。しかし豆柴の平均体高は約30センチなのに40センチを越えてしまったので、「ほんとに親犬は豆柴か」と問い合わせたところ、「豆柴と呼べるサイズ…」とあいまいな返答が返ってきたという例などが出ていました。このケースでは、飼い主さんが問いただすうちにショップ側は「それでは新しい豆柴を提供します」と言ってきたとのこと。飼い主さんは「一度愛情を注いだ犬を返すなんてできない!」と主張し、購入金額から5万円を返金してもらったそうです。
国民消費者センターによると、今年に入って犬に関する苦情相談が前年度より3割も増えているとか!最近の小型犬人気で「需要」を当て込んだ心ない繁殖業者による乱繁殖が、その犬種のスタンダードを大きく逸脱するような子犬を誕生させているということでしょうか。
だけど思うに、純血種は人間がコントロールして作られているとはいえ、ぬいぐるみとは違い、生き物なのですから多少の個体差が出るのは当然。サイズのばらつきはある程度は仕方のないことではないでしょうか。だからそんなにサイズに拘るというなら、ペットショップで「目が合ったから…」とむやみに購入しないこと。これはショップ側が親犬を確認しているケースが少ないからです(競り市で買ってきたりとか…)。親犬を見てなければ、成長した子犬のサイズなんてわかりませんよね。
次に、このようなトラブルを回避するには、購入前に希望犬種については本なりネットなりでできるだけきちんとした情報を入手しておくこと。またその段階で良心的な専門ブリーダーを調べ、その犬舎の犬の特徴をよく把握して、気に入った子を譲り受けるのがベストでしょう。
良心的な専門ブリーダーさんはどこにいるのかって?それは難問ですが、ネットのHPをよく見たり、あるいはドッグショーに足を運んで、実際にその犬種のスタンダードを見るとともに、そこに来ているブリーダーやハンドラー、出陳犬のオーナーたちと会って話をしてみることで情報収集をするという手もあります。やっぱりそれぐらいの努力は惜しまずやらなくっちゃね。
それにサイズの狂いだけじゃなく、無理な交配や見た目重視の交配で遺伝性疾患など、健康面で問題がある子犬を入手してしまうことだってあるわけですよね。その方が話は深刻。そうならないためにも子犬選びは慎重に、時間をかけてじっくり検討してほしいと思います。
ただ、飼い主側がいくら情報を集め、安全で健康な子犬を入手するために努力をしても、繁殖における規制が何もないのではどうしたってこうしたトラブルが起きるのは当たり前。
これは問題だなと思っていたのですが、JKCは来年4月から近親交配(父と娘、母と息子、兄妹など)で生まれた犬には血統書を発行しないことを検討中だという話も聞きました(現在は近親交配で生まれた犬の血統書には「極近親繁殖」と記載)。
もしこれが実現すれば標準サイズのことはもとより、遺伝性疾患を持って生まれてくる可能性の子犬の数は少なくとも今よりは減少するはずですよね。
あとは、よりスタンダードな個体をつくるにはその犬種に関する長年のブリーディング経験と知識が不可欠なわけですから、今の日本にそれをクリアしているブリーダーさんが何人いるのか、それをぜひ教えてほしいものです。それもきちんと犬種別に、ね。
※掲載した写真はイメージで、記事内容とは関係ありません。
◆-今回登場してくれたモデル犬たち-◆
柴犬:キキちゃん
トイプードル:ビットちゃん
スムースチワワ:アナちゃん
ミニチュアシュナウザー:ルルちゃん