犬は毎日ほんとにたくさんのメッセージを、飼い主である私たちに出しているのだそうです。八木先生は、そのメッセージをいかに早くキャッチして、彼らの言いたいことを正しく理解してあげるかが大切だと言います。
そうすることで、できるだけ彼らが「咬まずにすむ」状況をつくりだしてあげるということですね。そこで大切なのは、咬む前にそれをいち早くキャッチすること。そのためには、犬のボディランゲージ(カーミングシグナルともいう)を知っておくと便利です。
おなかを見せる子は安心 |
犬がおなかを上に向けているのはリラックスしている状態です。生後まもなく人にいっ ぱい触ってもらった経験のある犬は、成長してから誰にでも問題なく触られる子になります。また幼いときに兄妹同士でたくさん遊んで育った犬は、他の犬とのコミニュケーションがとても上手です。兄妹犬との遊びの中でルールをしっかり学んで成長するからですね。 |
てめえ、なにガンつけてんだ! |
犬が散歩などで出会った子をジッと見つめているのは、人間でいえばガンを飛ばしているのと同じ。もう少し近づいたら許さないぞ!という警告を発している状態です。逆にスッと目をそらす行為は相手に対して「私はあなたに敵意はありませんよ」というサインです。 |
緊張すると鼻が乾いちゃう |
鼻の下をペロリと舐める行為が見られたら、ちょっとストレスを感じているケース。これ以上近づかないで、嫌なことしないでというメッセージですから、それを無視して続けると犬は追いつめられて歯をむくことがあります。 |
ほかにも以下のようなボディランゲージがあります。ああこういうの、うちの子がよくやってるわと思いつくものがいくつかあるでしょう。
◆身体を掻く(不安や恐怖心をまぎらす)
◆ブルブルと身体を振るわせる(リラックスしたい)
◆舌を出す(不快な刺激をやわらげる)
◆あくびをする(不安なとき、ストレスを感じたとき)
◆動かなくなる(恐怖にフリーズする)
心にゆとりを持って対応しよう!
こうして見てくると、犬にとっては「咬む」ことはごくごく自然な行為なのですね。だから興奮して咬みそうな犬を追いつめたり、ひどく叱ったりするとますますエスカレートさせることになりかねません。まずは、「咬む」のは犬の自己表現のひとつだぐらいに考えて、ゆとりを持って対応していくのがいいようです。
たとえば、子犬はどんな子も甘咬みをします。それは自然な行為なので、しっかり咬ませてあげることは大切なのですが、エスカレートしていつまでも続いたり、咬んでほしくないものをターゲットにしてしまうと飼い主にとっては「好ましくない行為」になってしまうわけです。
甘咬みをする子犬を叱る→叱り続ける→唸るようになる→それに対してまた叱る→すると唸らずいきなり咬むようになる→どんどんエスカレートしてこちらが何もしていないときにもいきなり咬むようになる。こうした不幸な例はあとを断ちません。飼い主側に心の余裕がないと、子犬は間違った方向に行ってしまうんですね。甘咬みの時期は咬んで良いモノを与えてしっかり咬ませましょう。
また、おもちゃなどに執着して放さない場合には、動かないものには興味を示さないという犬の習性を利用します。おもちゃを取ろうと引っ張る行為をやめ、持ったままジッと動かないでその状態をキープします(目は合わせないで)。そうすると自然と口からおもちゃを放すようになります。そこで思い切り誉めてあげましょう。自発的にテンションを下げるように育てることが大切なのですね。叱るのではなく、まず自分が落ち着いて対応すると。
もうひとつ大切なのは、どんなに自分の子を愛していても、犬を全面的に信用してはいけないということ。「うちの子は大丈夫」という思いこみは禁物。それは彼らが犬だからです。だからいつ、どんなときでも外出するときはリードをつけましょう。それが命を守る道具になることがあります。公園などで自由に遊ばせてやりたいと思うときには、長く伸びるリードを使用するのがいいでしょう。
犬がわたしたちを癒してくれるのは、わたしたちが彼らにたくさんのプレゼントをあげたからこそなのです。犬たちはわたしたち人間のそばにいることで安心し、わたしたち飼い主を恐怖の対象から守ってくれる信頼すべき存在だと感じてはじめてリーダーだと認めるのです。
八木先生は言います。「1日のうちほんの少しでもいいから彼らにリラックスタイムをつくってあげてください。飼い主さんの手は優しくて温かいもの、信頼できるものだということを彼らに感じさせてください。間違ってもその手で犬たちを叩かないでくださいね。そんな行為は、咬む犬を育てることになるだけなのですから」
なんだか先生のお話を聞いているうちに、自分の犬たちがとっても愛おしくなってきてしまいました。わたしは、アッシュやハービーがイタズラ盛りだった頃、コラ~ッと言いながら叩いてなかったかしらん。
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