ここで「なぜ吠えるのか?」を犬の視点から考えてみましょう。
私を見て、かまって!
強気の犬の場合は(さっさといなくなれよ!)
守る意識が強い犬の場合(ここから先に来るな!)
だってたいくつなんだもん
近寄らないで、こわいよ~!(これがエスカレートすると咬む)
うれしくって、楽しくって声が出ちゃう
ママ行かないで、戻ってきて!
なるほど、なるほど、犬はいろんなコミュニケーションの手段として「吠える」ことを使っているというのです。それを知り、ひとつひとつに対応策を考えていけば、吠えさせない方法も見えてきそう。伊藤先生によれば、けっしてひとつの手段だけで解決しようと思わないことが大切だそうです。
まずは、どうしてその子が吠えているのかを探ります。いつ、どこで、何に吠えているのかを把握し、健康状態に問題はないか、痛みやトイレを我慢していないか、生活環境は満足のいくものかをチェックします。
たとえば、犬がいる場所が庭先で通行人が見えるところだったりした場合は、人通りを気にしなくてもよい場所に移動したり、フェンスなどをつくって犬の目線を遮るなどの工夫や改善で直ってしまったりすることがあるといいます。
そしてつぎにタイプ別、理由別の解決法に移ります。
ごはんが欲しい、お散歩に行きたいなどの具体的な要求に対しては、徹底的な無視が有効です。声をかけたりしないだけでなく、視線を向けることも駄目、とにかく反応しないこと。
電話に反応して吠える子の場合は、吠えた瞬間に、さりげなく霧吹きやスプレーで水をかけてビックリさせる。そして一番大切なことは、よい行動とは何かを教えることです。犬がおとなしくしているときに誉める。吠えないでおとなしくしたことに対して、誉めてご褒美をあげるわけです。それで犬は「何をすれば誉められるか」「何がよい行動か」を学習していきます。
この場合は、運動欲求を満たしてあげること。しっかり運動させ、しっかり遊ばせることが大切です。犬のおもちゃも最近はいろいろなものがありますが、頭を使って遊ぶものが効果的です。
安心できる場所(ハウス)を提供してあげる。そして徐々に環境に馴らしていきます。たとえば帽子をかぶった人をこわがる犬の場合、家族全員が帽子をかぶって「ほらこわくないよ!」と教えていきます。
日頃から身体にさわらせることに馴れさせて、リラックスマッサージなどをしてあげる。興奮しやすいハイテンションの子などは、とくにマッサージが効果があるそうです。
特定の人以外の人にお願いして世話をしてもらったり、ひとり遊びを覚えさせる。家族の人以外の人に遊んでもらうことで依存度を減少させていきます。たとえば、飼い主が鍵を持つ→でかけちゃう→吠えるという図式が出来上がっている場合には、暇さえあれば鍵をじゃらじゃらさせて、鍵と出かけることとの関連性をうすめていくわけですね。
これらのトレーニングは、短い時間で早い時期から始めます。早い効果を期待する場合には、犬たちの好きなもの(ご褒美)を与えて、関連づけをしていきます。
また、散歩中に吠える子の場合は、リードの持ち方や長さ、歩き方を変えただけで変化する子もいるそうです。具体的なトレーニングとしては、散歩の合間に呼び戻しの練習をする、呼ばれたら飼い主に集中すると何かいいことがあると覚えさせること。
最初は集中できないような環境はなるべく避け、散歩のコースも毎日変えて、1回の散歩中に最低4回ぐらい呼び戻しの練習をするのがいいそうです。
さらに、ドアホンに反応して吠える子の場合は、ドアホンと同じような音の出る機具を使って、ピンポンと同時に「おいで」の号令をかけ、犬が寄ってきたらすかさずご褒美をあげる。これを繰り返します。
そしてつぎには、ピンポンのあと「ハ~イ」と声を出し、「すわれ」を教える。これができればドアホンが鳴ったら「おいで」と声をかけ、来客に 向かって大きな声で「ハ~イ」と返事をすると、犬は「すわれ」の体勢になる。ここで待っていれば誉められる、そしてそのあと遊んでもらえると犬が思うようにトレーニングしていきます。ピンポンで「マットやハウスに行く」ぐらいまでできたら、もう完璧ですよね。
最後に伊藤先生は、これから犬を飼おうと思っている人に向けて、大切なことを言われました。
予防できることはシッカリすること
問題を起こさないために飼う環境をととのえること
食事管理はリーダーがする、どこでもさわらせる子にすること
目のとどくところにいさせる、囲いやリードなどで制御すること
トイレやハウスでの過ごし方をしつけること
人や犬とたくさん出会う機会を設けて社会化を身につけさせること
など、などです。わかっているようで、完璧に実践するのはなかなか困難なこともありますが、こうしたことをしっかり頭に入れたうえで、必要に応じてトレーニングを入れていけば、愛犬はきっと暮らしやすい、吠えない犬になっていくと思います。わたしも、もうもう一度認識を新たにしました。
■トレーニングに関する情報はこちらから
■日本臨床獣医学フォーラムの公式サイト