ちょっと古くなってしまいましたが、3月23日に開かれた「ヒトと動物の関係学会」で気になるレポートがありました。それが「ネパールのペット事情」というものです。
発表者は動物ライターで「ネパールに狂犬病ワクチンを送る会」の加藤由子さん。 「ネパールに狂犬病ワクチンを送る会」は、ネパールの狂犬病対策プログラムを 支持することを目的に設立された団体ですが、集まった募金をもとに2001年の12月、現地での予防接種を行ったそうです。ネパールにはまだまだ狂犬病があるんですね。
最初の接種が行われたのは、バクタブールという町だそうです。
犬や猫を対象に全部無料ということもあって、かなりの愛犬家・愛猫家が集まりました。ネパールで愛犬家? と首を傾げたくなりますが、それは大きな思い違い! ネパールの人びとの犬への愛情はかなり深いものがあったそうです。
加藤さんはこんなことを言われていました。
「朝から予防接種を受けつけたんですが、長い行列が1日中続きました。 みなさんけっこういろんな犬種をお飼いになっておられるんですが、おもしろいことに、誰もが犬を小脇に抱きかかえて下に降ろされないんです。ずっと抱いたまま、何時間でも待っておられる。なかにはけっこう重そうな中型犬もいるわけですけど、下に降ろさない。女性の方もです。2頭を両脇に抱えられたおじさんもいました。きっと室内で大切に育てておられるんでしょうね」
加藤さんの報告によると、ネパールの犬は3種類に分けられるのだそうです。
まずは家庭で大事に飼わているプライベートドッグ、次に地域住民が共同で飼っているコミュニティドッグ、最後が飼い主のいないストリートドッグ(早い話が野良)です。
旅行者などが街で見かける犬たちは、人ごみの中を自由に歩き回り、好きな場所で 昼寝をするコミュニティドッグやストリートドッグたちですが、彼らの多くは 人間に無関心。路上に堂々と横たわり交通の妨げをしていたりしますが、人間の方も道の真ん中で寝ている犬がまるで目に入らないかのように、知らん顔なのですね。
犬も人間も同じ地球上に住まわせてもらっている住人なのですから、お互いが干渉せずそれぞれの「権利」を認めあって生きてるということでしょうか。
今回、接種会場に集まった犬たちは、ほとんどがプライベートドッグだったそうですが、彼らはほんとの「箱入り娘・息子」で外を出歩くことすらありません。外は病気や事故やほかの犬とのトラブルなどの危険性があって、とても出せないということでしょう。つまり散歩はしない犬たちってこと。だからみなさん、危険な地面に犬を降ろさないわけなんですね。そして、二度ビックリなのは、そうしたプライベートドッグたちが吠えるでもなく、下に降りようとジタバタするわけでもなくおとなしくしていること。
「飼い主とプライベートドッグとはすごく密着度が高いんです。そのスキンシップの豊かさと、犬の飼い主に対する信頼の大きさには驚きました」(加藤さん) 日本ではちょっと考えられませんよねー。うちのアッシュやハービーなどは、犬が たくさんいるところにでも行こうものなら、暴れまくって下に降ろせと騒ぎたて、 降りれないとなると間違いなくワンワン抗議しまくることでしょう。 発展途上の国だと思っていたネパールに、しっかり犬と人間との関係が築かれていることに驚くとともに、ちょっぴり反省もさせられる加藤さんのレポートでした。
■海外で暮らす犬の生態や飼育事情を紹介しているサイト集
■ヒトと動物の関係学会