つらいけどやりがいのあるパピーウォーカーの仕事 |
一方、私などには到底つとまりそうもないパピーウォーカーの仕事とは、その仔犬が将来、視覚障害者の方との生活にスムーズに溶け込めるよう、一般家庭で愛情豊かに育て、人間に対する親しみと信頼感を持つように飼育することにあります。犬にとっての生後1年間は、情操面でも非常に大切な時期。この時期に人間とどのような生活を送るかによって、その犬の性格が大きく左右されるわけですね。
パピーウォーカーの条件は、訓練センターの近郊に在住、車で移動できる人で、現在犬を飼育していないこと(猫・鳥は可)。犬を飼育していると、吠えたり飛びついたりというその子の悪い癖を真似てしまうからです。
さらに、居間に犬舎を置くなどして室内飼育が可能であること(玄関は不可)。外飼いは精神状態が不安定となり、吠えて人を呼んだり、人が犬舎に近づくと興奮して飛びついたりするようにな傾向をつくります。留守がちな家も不可。とくに最初の2カ月は1日3~4回の食事と排泄のしつけを行うため、切れ目のない観察が必要となります。 もちろんしつけに関しては、家族全員の参加が大切ですよね。そういう理由から、小学校低学年の子どもがいる家はお母さんが忙しいため 望ましくない。赤ちゃんがいる家も不可。また、60歳以上の高齢者が同居している家も犬が飛びついて事故が起きやすいため不可とのことです。
なんともきびしい条件ですよね。
気になる諸費用はどうなっているのでしょう?
パピー犬を育てる経費のうち、食費、日常の医療費(検便、健康診断、ボランティアの過失によって起こった事故の治療費)などは、ボランティアの負担となります。協会が負担するのは、混合ワクチン、狂犬病予防注射、フィラリア予防薬のみだそうです。
さて、そうまでして愛情をかけて育てたあとにやってくるのはつらい別れ。一番かわいい子犬の時期をともに過ごしたボランティアの方たちにとって、それがどんなにつらくても1年後には「必然」の別れがやってきます。
そればかりかボランティアには新しい飼い主の名前、住所は知らされない規則。犬が新しい主人に対して信頼感を持つまでは、とても不安定な状態になるためだそうです。なるほど…たしかにそうでしょうね。
また、適性診断のあとリジェクト犬(盲導犬の訓練から外れた犬)となっても、パピーウォーカーがその子を引き取ることはできません。
つまりボランティアの方たちにとって、一度お別れしたら、その子には二度と会えないということですよね。それはあくまでも1年間のボランティアであり、協会としては引き続き新しいパピーを育ててくれるようお願いしていくことになるのだそうです。