★『アンジュール---ある犬の物語』 ガブリエル・バンサン(ブックローン出版) ¥1,300- |
エンピツだけを使った単純で飾りのない線。妙に心引かれるかなしげなワンコの表情に、思わず手に取ってしまったのが『アンジュール』という本です。
ガブリエル・バンサンという人が描いたこの絵本は、知る人ぞ知る隠れたベストセラー。文字も解説もない50枚のデッサンだけからなる本なのですが、それだけにすごいメッセージ性があるんですねー。
タイトルのアンジュールというのは、“UN JOUR”つまり“ある日”の意味で、主人公であるワンコに突然起こったある日の出来事を描いています。そのワンコはある日、田舎の一本道を走るクルマの窓から捨てられてしまいます。全力で飼い主のクルマを追いますが、やがてそれは見えなくなっていってしまう。そしてワンコの長い旅がはじまるのです。
野から海辺へ、そして街へ、うなだれて歩き、記憶にあるにおいを探し、途方に暮れて佇み、自分がここにいることを知らせようと空に向かって遠吠えします。その様は、まるでその場に自分が立ち会っているような臨場感。ワンコの仕草や表情(ほとんどが陰影だけ)も、とってもリアルで思わず「こっちへおいで!」と言いたくなってしまうのです。それにしてもなんてかなしげな、そして哀れをさそう線画なのでしょう。だけど、それはかなしいばかりではありません。最後には…いや、やめておきます。
最後の結末は、みなさんがぜひその目でたしかめてくださいねー。