
そのルーツは波瀾万丈。14世紀の帝政ロシアの時代に、野ウサギやキツネ、オオカミなどの狩猟犬として開発され、18世紀には王侯貴族の間で狩猟犬の主役としてもてはやされたそうです。しかし、20世紀に入って十月革命が起こり、貴族もその飼い犬たちもみんな暴徒に殺されたため、一時期ボルゾイは絶滅したように思われていました。ところが人気の高かったころにヨーロッパの裕福な愛犬家たちが輸入して飼育していたことがわかり、欧米を中心に徐々に繁殖が続けられてきたということです。アナスタシアという悲劇の皇女の映画がありましたが、まさにボルゾイは犬版のアナスタシアというわけですね。
わたしが訪ねたのは、ボルゾイ歴15年という東京は大田区にお住まいの矢田さん。いまは1歳と1カ月のニコちゃんが矢田さん宅の“姫”です。
矢田さんがボルゾイを飼うのは2頭目。1頭目はソニアちゃんというメスのボルゾイで、もとはお友達の飼い犬だったのですが、わけあって譲り受けられたのだそうです。ご夫婦の愛を一身に受けたソニアちゃんは13歳と8カ月で大往生を遂げたのですが、矢田さんは寂しくて矢も楯もたまらず、49日を待ってすぐ小諸にある「ボルゾイ牧場」を訪ねニコちゃんを購入してきたとのこと。矢田さんのあまりの落ち込みようを見かねたご主人やお子さんたちが、後押ししてくれたそうです。