怪獣映画屈指の決戦の舞台!名駅の高層ツインビル
一方で、クライマックスの決戦地という大役を務めるのがJRセントラルタワーズ…、もとい物語上は「ステーションビル」と記されているので、タワーズにウリふたつのツインビルです。北側のオフィス棟の30階あたりに、何とガメラが上半身突っ込んだまま宙ぶらりんになってしまい、バトルは長らくこの状態のまま展開されます。それでも、こんな甚大な被害に遭いながらもタワーズ(にそっくりのビル)は決して崩壊することなく、名古屋のシンボルにふさわしい建築強度の高さをしっかりアピールするのです。夜のシーンが多かった平成版3部作に対し、ほとんど日中に街中バトルがくり広げられるのも今作の特徴。よく見ると手羽先の「世界のやまちゃん」の看板が!©2006「小さき勇者たち~ガメラ~」制作委員会 |
「名所たるもの一度は怪獣に壊されてナンボ」というのが怪獣・特撮ファンの共通認識ですが(?)、過去の幾多の決戦地と比べても、今回のJRセントラルタワーズ(しつこいようですが、にそっくりのビル)は出色の「いい仕事」をしているんじゃないでしょうか。天空を貫く高層ツインビルに怪獣が串刺し。こんなド迫力のギミックには、ついぞお目にかかったことがありません。
親子で感動できる良質のファミリー映画
それに、怪獣が暴れ回る舞台として白羽の矢が立ったということは、名古屋が元気な証拠に他なりません。だって、経済が落ち込んでいる都市が、映画とは言えメチャクチャに壊されちゃそれこそシャレになりません。「ちぃっとばかし壊けたってワシらは平気だで、あんびゃあ(按配=あんばい)よぉやってちょ」、そんな名古屋人の余裕があればこそ、ド派手にブチ壊されるなんてお役も笑って受け入れることができるのです。名古屋うんぬんはヌキにしても、良質のファミリー映画としてもお薦めです。平成版ガメラ3部作が「大人を唸らせる怪獣映画」とマニア筋から絶大なる評価を受け、私自身も唸りましたが、今作はあらためて、怪獣映画を子供たちの手に戻した意欲作だと思います。ガメラ映画でありながら、主人公はあくまで小学生の透であり、ヒーローはたくさんの子供たち。彼ら彼女らがガメラのためにある物をリレーするシーンでは、ちょっとうるっと来ちゃったほどです。また、「ガメラ3」が躊躇なく大量の犠牲者を出していたのに対し、今作はあれほど街が壊されながらも人が1人も死にません(若干1名、常滑市出身の渡辺哲さんが怪獣の餌食になってしまったと連想させるシーンがありますが)。これも、子供向け映画の良識を守る英断だったと評価したいと思います。
こぼれ話満載。「ロケ地MAP」片手に名古屋観光を
一連の名古屋ロケのコーディネートを担当したのが公的機関である「なごや・ロケーション・ナビ」。その荒川真澄さんに、撮影の裏話をお聞きしました。「これだけ大々的に名古屋が舞台となった映画は、おそらく史上初だと思います。あちこち交通規制して撮ったのですが、中でもすごかったのが父親が主人公を止めに駆けつける名駅三丁目のシーン。あまりにも大量のガレキの山のセットが組まれていて、現場を見てのけぞってしまいました。事故だと勘違いして救助に駆けつけてくれた人もいたほどです(笑)。
超リアルなセットでロケコーディネーターも驚愕した名駅三丁目のシーン。©2006「小さき勇者たち~ガメラ~」制作委員会 |
荒川さんらは、この映画の撮影場所を詳細に記した「ロケ地MAP」も作成。名古屋市内の観光案内所や伊勢志摩の近鉄主要駅、東海3県の上映劇場で無料配布されています(ただし数に限りあり)。各シーンのロケ場所が分かりやすく示され、撮影時のこぼれ話や、各地のお薦めグルメまで紹介されているスグレ物。ゲットしない手はありません。是非このマップを手に、名古屋や伊勢志摩のロケ地巡りを楽しんでください。
名古屋周辺地域を中心に配布されるロケ地MAP。本作鑑賞者なら是非ゲットしたい一品です。 |
そして、お父さんお母さんは、名古屋駅に降り立ったら、真っ先に「あれがトトが突っ込んだ(のにそっくりの)ビルだよ」と子供たちに教えてあげましょう。そんな大惨事を物ともせず、見事に復興した名古屋が皆様をお出迎えいたします!
■関連サイト
・「小さき勇者たち GAMERA」
※作品の公式サイトです。
・なごや・ロケーション・ナビ
・伊勢志摩フィルムコミッション
※映画やテレビドラマのロケ撮影をバックアップする、名古屋と伊勢志摩の公的機関のサイト。エキストラ募集も随時しているから、名古屋および三重の映画・ドラマに参加するチャンスも!
・志摩市
※前半の舞台となっている志摩市のHP。
・「小さき勇者たち GAMERA」
※「AllAbouto(オールアバウト)」爬虫類・両生類ガイド・星野一三雄氏の作品レビュー。さすがに爬虫類専門家らしい視点で鋭くチェックしていて、作中に登場する赤ちゃんガメラに関する「へぇ~」な話題が満載。かなり面白いです。