「ハッピーアペリティフ in 大阪」取材レポート

イベント会場となった綿業会館(会員制クラブ。一般公開は第4土曜日のみ。有料・要予約)です。1931年(昭和6年)に建築された国指定重要文化財です。
「アペリティフ」(Apéritif)とは「食前酒」を意味するフランス語です。2004年にフランス農務省が「アペリティフをもっと大切にしよう」と毎年6月第1週目の木曜日をアペリティフの日に認定しました。アミューズブーシュ(Amuse bouche)と呼ばれる一口ディッシュを頂きながらハッピーアペリティフを楽しもう!……という実にグルメ大国フランスらしい記念日ですが、現在ではフランスのみならず世界的規模でイベントが開催されています。

お楽しみのアミューズ(おつまみ)です。大阪のフレンチの名店が数多く出店していました。
2008年の日本では東京、京都、大阪、横浜など7都市で開催されましたが、ガイドがそのうちの1つハッピーアペリティフ in 大阪に行って来ました。今回のガイド記事はその模様をお届けします。

イベント会場は大阪が世界に誇る近代化遺産「綿業会館」

綿業会館の「エントランスホール」です。イタリア・ルネッサンス調の重厚な内装で、巨大なシャンデリアにも注目です。
ハッピーアペリティフを主催したのは三休橋筋商業協同組合。キタ(梅田)とミナミ(なんば)を繋ぐメインストリートとしては御堂筋が有名ですが、三休橋筋も大阪市内を南北に貫く通りです。俗に船場と呼ばれるエリアで、江戸時代には「天下の台所」として、近代には「商都・大阪」「大大阪」として繁栄した界隈です。今回のハッピーアペリティフのイベント会場はその三休橋筋沿いにある綿業会館(会員制クラブ。一般公開は第4土曜日のみ。有料・要予約)にて開催されました。

大正、昭和初期の大阪は「東洋のマンチェスター」と呼ばれるほど綿業が発達して、昭和4年にはアメリカ、イギリスを抜いて綿製品の輸出で世界第1位の都市になります。綿業会館は大阪がもっとも華やかに輝いていた時代に日本綿業倶楽部の社交施設として建築されたものです(1931年、昭和6年竣工)。

「日本綿業界の発展のために」と100万円(約50億円)を寄付した岡常夫氏の銅像です。公のために私財を投げ打つ。これぞ船場商人の誉れです。
その建築費用は東洋紡績の専務取締役・岡常夫氏の遺産100万円と、綿業関係者からの寄付金50万円の合わせて150万円(現在の資産価値では約75億円)。じつは同時期に大阪城天守閣が大阪市民の寄付金で再建されていますが、この大阪城天守閣の建築費用が47万円(現在の資産価値では約24億円)でした。つまり綿業会館は大阪城天守閣の3倍以上の資産価値を有するというわけです。

1932年には国際連盟の調査団・リットン卿が来館して国際外交の桧舞台にもなり、まさに大阪はおろか日本を代表する近代名建築です。もちろん国指定重要文化財で、2007年には近代化産業遺産に認定されていますが、世界的規模のイベントであるハッピーアペリティフのイベント会場としては、これ以上ない舞台といえるでしょう。

シュッドウェスト地方を担当したのは「ボンヴィラージュ・オゼ」の皆さん。フランス名産ワインと大阪フレンチのコラボレートです。
そんな綿業会館で開催されたハッピーアペリティフですが、フランス本土の中から7つの地域のワインをピックアップして、それぞれのワインにあったアミューズをお届けするというものでした。とくにアミューズが素晴らしく、エプバンタイユアキュイールビストロ・ダ・アンジュボンヴィラージュ・オゼなど大阪フレンチを代表する名店が多数出店。またシャンソンのライブやクラシックの演奏会なども開催されて、極上の時間を演出していました。

シャンソンライブの様子です。美しいレトロビルでワインとアミューズとおしゃべりと音楽と……まさに「ハッピーアペリティフ」の醍醐味です。
ハッピーアペリティフというのは要するに食事だけではなくて、もっとおしゃべりを楽しもうというフランス流のスローライフの提唱といえます。世界に冠たるグルメ大国のフランスですが、大阪も我が国有数のグルメ都市。近年はコナモン(たこ焼き、お好み焼)のイメージが先行してしまっていますが、じつは大阪は器や空間、食材の色合いを愛でる懐石料理の発祥地でもあり、趣味性や遊び心のある食文化も有しています。綿業会館のような社交クラブが成立したのも、大阪人のスローライフの現れといえますが、フランスと大阪の見事なスローライフ文化の調和を感じたイベントでした。

さて、次ページではハッピーアペリティフで開催された特別公開の「綿業会館見学ツアー」についてご紹介しましょう。