症状2:「自分ひとりがヒーローのオレ様夫」
「ねぇ、あなたも飲む?」夕食後、妻が小さな錠剤を俺に見せた。「なんだそれ?」
「ダイエットに効くサプリよ。これを食後に飲むと脂肪分の吸収が半分に抑えられるんですって。夏に向けて、少しはやせようと思って。」ダイエットという割に、妻の食事量はほとんど変わっていない。
「炭水化物は太る」と言って米はほとんど食わないが、その分、いや、それ以上に甘いものを食べる。口では「別腹」とか言っているが、着実にウエストに肉がついている。
「お前って、本当にバカだなぁ。そんなもの飲むより、甘いものを食べない方がよっぽど効果があるよ」
「それができたら苦労はしないわよ」
「だいたい、食べたカロリーより消費するカロリーが少ないから太るんだろ。太りたくなけりゃ、食べないで運動すればいいんだよ。そんなこともわからないなら、小学校からやり直してこいよ」俺の言葉に、妻もムッとした顔で言い返す。
「運動するって言ったって、子育てと家事とパートで精一杯よ。だいたい、スポーツクラブに行くような家計の余裕なんかないわ」
「じゃあ、サプリメントを買う家計の余裕はあるのか?大体、今まで何回ダイエット宣言をした?いろいろ買い込んだって、一度も体重が減ったためしがないじゃないか。そのサプリだって怪しいと思わないか?脂肪の吸収を半分に抑えられるのはどういうメカニズムなんだ?論理的に、俺が納得できるように説明してくれよ。それができるなら、飲んでやってもいいさ。」
「……それはよく知らないけど、広告では一応説明してあったし、女優の○○が、これで痩せたってTVでやってたわよ」
「ほら、やっぱり何にも分かっていないじゃないか。そんなことだろうと思ったよ。科学的な根拠も理解しないで、よく商品を買えるよな。頭の悪さもここまで来ると、救いようがないってところかな。いいか、よく覚えて置いたほうがいいぞ。まず、商品を買おうと思ったら、TVの宣伝なんか信用しちゃダメだ。俺に言わせりゃ、あんなものはメーカーの担当者と広告代理店が……」
「もういいわよ!そんな言い方しなくてもいいでしょ!」と妻は涙目になってリビングを出て行く。なんだよ……。
折角、損をしない買い物が出来る方法を教えてやろうと思ったのに。バカみたいな行為をバカって言って、何が悪いんだ? すぐ女は感情的になるんだから……。