乗客もまばらな富山行き
小雨模様の高山駅から富山行きの「ひだ」に乗り込む。名古屋から到着した列車は長い編成だったが、多くの車両が切り離されて富山へ向かうのは僅か3両である。車内はがらがらだった。わざわざ指定席を取っておいたのだが、自由席でも充分だったようだ。高山を出てしばらくすると川が寄り添ってくる。飛騨川と異なり、流れが列車の進行方向と同じだ。高山本線の車窓のポイントは川沿いの景観だが、今度は、高山市内を流れていた宮川が連れ添う。
山々に囲まれた平坦なところを小気味よいテンポで駆け抜けていくが、小雨で煙っているせいか、山の頂付近はよく見えない。飛騨古川は白壁土蔵の城下町として知られる観光地である。ホームには、かつてNHKの朝ドラ「さくら」の舞台となったことを紹介する案内板が立っている。高山も舞台だったと思うが、古川の方がPRに熱心のようだ。
飛騨古川からはだんだんと山深くなっていく。宮川が右に左にと移ろうので、それに合わせて座席の位置も左に右にと慌しく変える。ガラガラの車内だからできる芸当だ。指定席車は降りる一方で、もう新たに乗ってくることはなさそうだ。長距離列車の末端区間の指定席は、空いていれば優雅に過ごせるのが利点だ。自由席だと、短区間でも乗ってくる人がいるから、これは指定席のメリットでもある。
人跡未踏のような山岳地帯は、水害のため2004年から2007年秋にかけて不通だった区間だ。復旧し、このように車窓が再び楽しめるようになったのは嬉しい。猪谷からは、JR西日本管内に入り、次第次第に平地へと風景は変わっていく。
最後の停車駅越中八尾(やつお)は、「おわら風の盆」という祭りで有名な場所だ。八尾の情緒ある街並みも知る人ぞ知るところ。機会があれば途中下車してみたい。
越中八尾から先は平地をラストスパートする。左から合流してくるあいの風とやま鉄道(旧北陸本線)と一緒に神通川の鉄橋を渡れば富山到着。高山からは「ワイドビューひだ」で約1時間半。岐阜から延々と延びてきた高山本線の旅は終わる。
東京~高山間、名古屋乗換と富山乗換の比較
2015年3月に北陸新幹線が金沢まで延伸開業し、富山は最速列車「かがやき」の停車駅となった。「かがやき」に乗れば、最短で、金沢へ19分、長野へ46分、東京へ2時間08分だ。とくに東京との距離が驚異的に近くなったので、東京~高山のルートとしては、従来からの東海道新幹線、名古屋から高山本線経由の「ワイドビューひだ」という定番ルートのほか、北陸新幹線、富山から高山本線経由「ワイドビューひだ」というルートも考えられるようになった。
高山~富山の「ワイドビューひだ」の本数が、1日わずか4往復しかなく、富山駅での新幹線と在来線特急乗り継ぎに割引が効かないといったハンディがあるにもかかわらず、所要時間は富山乗り換えの方が早く、運賃も富山経由の方が距離が短いため安くなる(特急料金は、乗り継ぎ割引が効かないので、富山乗り換えは、名古屋乗り換えよりも高くなってしまう)。
往復で、経路を変えてみるのも変化があってよいのではないだろうか。
<例>
東京 9:00(のぞみ213号)10:41 名古屋
名古屋 10:48(ワイドビューひだ7号)13:10 高山
(現実的には、東京発8:50 のぞみ103号)が無難である)
乗り換えを含めた所要時間 4時間10分
運賃=8750円、特急券=4830円(のぞみ)+1340円(ひだ)(割引あり)
合計=14920円(通常期)
東京 10:24(かがやき509号)12:32 富山
富山 13:02(ワイドビューひだ14号)14:31 高山
乗り換えを含めた所要時間 4時間07分
運賃=7880円、特急券=6250円(かがやき)+1700円(ひだ)(割引なし)
合計=15830円(通常期)
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