東京「枝線」紀行【１】東武・大師線(2ページ目)

当駅ではきっぷの発売はいたしておりません……

大師駅の改札口は無人だった

ちょっとした球技ならできそうな広いホームから階段を降りる。駅から外へ出るには当然改札口を通るわけだが、ラッチはあるものの、自動改札機ではない。駅員もいないから乗客は皆そのまま外へ出て行く。

改札の近くには、「お願い」と書かれたこんな掲示があった。


実は、大師駅は無人駅なのだ。東京23区内に無人駅があるというのも極めて珍しいが、西新井駅で乗り換える時に自動改札機があったのはこのためで、要するに、大師駅の改札口は西新井駅にある、という考え方である。

大師前駅はかなり大きな高架駅

西新井駅からは、乗車前に切符を買って回収されてから乗る。大師駅からは、切符を買わずに乗り、西新井駅で列車を降りてから切符を買って改札を出る。そんな何とも珍しいシステムなのである(もちろんPASMOやパスネットカードなら切符は不要)。大師線には途中駅がなく、すべての乗客は大師前か西新井で乗降するしかないから、このようなことが可能なわけだ。

もっとも、無人といっても駅員がいないというだけで、駅舎内にはファーストフード店や書店などが入居し、高架下には東武バスの車庫もあるから、人の往来は常にある。

幻に終わった東武西板線計画

徒歩3分ほどのところにある西新井大師

この大師線や大師前駅の「大師」とは、駅のすぐそばにある西新井大師(五智山遍照院總持寺)のことである。文字通り西新井大師の至近にある駅で、正月などは初詣客で賑わう(その時だけは臨時に駅員が配置され出改札をするようだ)。

その昔、寺社への参詣は庶民の数少ないレジャーとしての一面もあった。そのため草創期の鉄道は参詣客目当てに敷かれたものも数多い。しかしこの大師線は参詣鉄道として計画されたのではなく、当初は、東武伊勢崎線西新井駅と東武東上線上板橋駅とを結ぶ、東武西板線として計画された路線の一部であった。

西板線の計画自体は様々な事情が重なり、結局幻に終わってしまったが、既に用地を取得していたこの大師前までの区間のみが着工され、1931(昭和6)年に西板線として開業した(当時は1.1kmあった)。

もうここから先に線路が延びることはない

東武鉄道の12路線のうち10路線は浅草から北へ延びる伊勢崎線に集約される。しかし起点が浅草という中途半端なところにあるため、東京の私鉄にとっての命題ともいえる「山手線に接続」が果たせず、結果として沿線の発展が遅れたとも言われている。一方で、孤立しているように見える東上線系統は、池袋が起点である。

その両者が西板線でつながっていたら、東京の交通体系もずいぶんと違うものになっていただろう。今回だって、自宅最寄りの東上線東武練馬駅から直接大師前駅へ来たはずである……いやいや、それだと「枝線」ではないからそもそも来ていないか。

西新井大師で遅い初詣、半端な運勢

門前の情緒あふれる西新井大師参道

せっかくだから、西新井大師へ立ち寄ってみる。駅の西側にはすぐ石畳の道があり、角を曲がればもう東門で、大本堂の屋根がちらと見える。正面の山門に回ると、その門前には短いながらもいい雰囲気の参道があり、団子などを売っている。

そういえば、今年はまだ初詣をしていなかったということを思い出し、賽銭を50円奉納して盛大にお祈りしておいた。ついでとばかりおみくじを引いてみると、「運勢小吉」と出た。おみくじの初穂料は200円である。冷静に考えれば、賽銭をもっと奮発すべきだったと後悔したが、もう後のまつりであった。

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◎その他の記事はこちら
東京「枝線」紀行【２】東京メトロ千代田線・北綾瀬支線
東京「枝線」紀行【３】京成電鉄・金町線
東京「枝線」紀行【４】西武鉄道・豊島線

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[関連サイト]
■TOBULAND 東武鉄道沿線情報(公式サイト)
東武鉄道の路線図や運賃、時刻、沿線情報など。

■東武鉄道の歴史
公式サイト内にある年表。

■西新井大師(公式サイト)