全国各地の駅で、それぞれ個性的な発車メロディーが流れている。その由来がはっきり分かるものもあるが、中には説明を受けないとなぜこの駅でこのメロディーが流れているのか分からないものもある。そうした意外性のある発車メロディーを紹介する。
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JR東日本、牛久駅(常磐線)2番線ホームの「オー・シャンゼリゼ」

東京駅から常磐線直通列車に乗って約1時間で到着する牛久駅(茨城県)。土浦・水戸方面行きの列車が発着する1番線ホームでは、アメリカ生まれのフォークソング「グリーングリーン」が駅メロとして流れる。この曲の歌詞には深い意味があるとされるが、ここではシンプルに「大自然を歌った曲」としてとらえ、駅西口方面にある牛久沼をはじめとした自然豊かな土地のイメージになぞらえているようだ。
一方、東京方面の列車が発着する2番線ホームで流れるのは「オー・シャンゼリゼ」。もとはイギリス生まれの曲だが、もっぱらシャンソンあるいはフレンチ・ポップスの曲として認知され、日本では越路吹雪が唄ってはやった。
しかし、なぜこれが牛久駅の駅メロに採用されたのか?

2番線ホームに近い牛久駅東口はシャトー口(くち)とも呼ばれるように、歩いて10分もかからないところに1903年に創業した日本最初のワイン醸造施設・牛久シャトーがある。これは山梨県・兵庫県の施設とともに近代化産業遺産群の1つとして知られている。現在でもヨーロッパ風の建物群が異彩を放っているが、フランスのボルドーから製法などを学んだとされる。
そうした歴史的背景から、フランスといえばパリ、パリといえばその目抜き通りシャンゼリゼと連想が働き、有名な「オー・シャンゼリゼ」を駅メロに選んだようだ。
JR東日本、国分寺駅(中央線)「電車ごっこ」

国分寺駅は、中央線の快速、中央特快、通勤特別快速、青梅特快が停車し、列車の追い抜きも行われるため、1番線から4番線までホームがある。その全ての番線の発車メロディーが文部省唱歌「電車ごっこ」。「運転士は君だ、車掌は僕だ」で始まるおなじみの曲である。この“電車”は、中央線を走る電車ではない。歌詞に「ちんちん」「次は上野の公園前だ」とあるように、都電のことである。

それでは、なぜ、この曲が国分寺駅の発車メロディーに採用されたのか?
それは、作曲家の信時潔(のぶとき・きよし)氏が亡くなるまでの半世紀ほどを国分寺で過ごしたからだ。地元の人々がゆかりの曲を発車メロディーに採用するようJR東日本に働きかけて実現したという。
信時潔氏は隣駅の西国分寺駅の発車メロディーとなっている「一番星見つけた」などの童謡を作曲したほか、全国の小中学校、高校、大学の校歌など生涯に1000曲以上も作曲している。偶然だが、筆者の母校(愛知県立旭丘高校)や教師としてかつて勤務した学校(都立松原高校)の校歌も彼の手によるものと知って親しみを感じている。
JR九州、津久見駅(大分県)「なごり雪」

半世紀ほど前にフォークシンガーのイルカが唄い大ヒットした名曲「なごり雪」を作曲した伊勢正三氏の故郷・津久見駅の発車メロディーとして列車が発着するたびに流れている。
曲の歌詞には「東京で見る雪」とあるように、文字通り解釈すれば舞台は津久見駅ではない。歌詞の主人公と別れて彼女が乗った「汽車」は、津久見へ向かう列車、当時日本最長のブルートレインだった東京発西鹿児島行きの「富士」と思われる。もっとも、伊勢氏は郷里の津久見駅をモチーフとして曲を作ったと述べている。
駅には「なごり雪」のモニュメントが建ち、「みかんとセメントの街、津久見」の誇りとしてアピールしている。

JR西日本、新今宮駅(大阪環状線)ドヴォルザーク交響曲第9番「新世界より」第4楽章

大阪ミナミの中心の1つ天王寺駅から大阪環状線に乗り、西に向かった最初の駅が新今宮。歓楽街が近く、周囲はごちゃごちゃした感じがつきまとう。この駅の発車メロディーは、周囲の雰囲気と合いそうにないクラシックの名曲・ドヴォルザークの交響曲第9番第4楽章。勇壮なメロディーだ。
なぜ、この曲?

ドヴォルザークの交響曲第9番「新世界より」。仕事で長期間アメリカに滞在中に作曲した名曲で、哀愁に満ちた第2楽章は夕暮れの帰宅を促すメロディーとしてよく知られている。
そのためか、わざわざ第4楽章が使われているのだが、駅近隣にある繁華街「新世界」と名前が同じという理由で、この曲が発車メロディーとして採用された。ちなみに曲の愛称「新世界」とはアメリカのことである。
JR東日本、藤沢駅(神奈川県)藤沢市歌

JR藤沢駅(東海道本線)の発車メロディーは、市外から訪れた人には全くなじみのないメロディーであろう。それもそのはず、この曲は、藤沢市の市歌だからだ。
藤沢市歌の歴史は古く、1950年に制作されている。このほど市歌の認知度向上を図るとともに、街への愛着を深めてもらうのが目的で、市民の要望を取り入れて2024年10月からJR藤沢駅の発車メロディーに採用されたものだ。
編曲を担当したのは、首都圏の鉄道を中心に発車メロディーを数多く手掛けてきた塩塚博氏。近年、新規発車メロディーの制作が激減している中で久しぶりの仕事だったという。
列車のワンマン化の影響もあり、ご当地発車メロディーが減少の一途をたどっている。しかし、利用者に親しまれているだけに、何とか工夫して生き残れないものかと思う。







